2019年9月20日発行の比較的新しい著書である。

 

教誨(きょうかい)師と死刑囚との交流を扱った物語である。

 

教誨師とは、刑務所で受刑者などに対して徳性教育をし、改心するように導く教誨を行う者のこと。無報酬で、多くの場合、僧侶や牧師など宗教家が、その役割を担う。

 

顕真(けんしん)和尚は数十名の受刑者を前に講和を行なっていた。

 

このうちの約四分の一が死刑囚ということである。

 

その中に見覚えのある男を見つける。

 

関根という男で、学生時代の友人であり、命の恩人であった。

 

若い男女を刺殺した死刑囚ということである。

 

25年前に我が身を危険にさらして自分を含めて二人の命を救った過去から、判決に違和感を感じる。

 

面会して話をするも、違和感は拭えない。なぜ、彼は生きることを諦めようとするのか?ここに至るまでの彼の人生はどのようなものだったのか?

 

顕真は事件を担当した検事に対して裁判記録、判決文を取り寄せる。

 

また、弁護士や、捜査を担当した刑事、富山とその部下、文屋(ふみや)から話を聞く。

 

すると、富山が席を外した時に、文屋が捜査の段階で違和感を感じていたことが判明する。

 

事件の翌日に関根が自首してきたので、証拠固めがおろそかになっていた。また、自供と現場の状況に食い違いがあった。

 

顕真と文屋は内々に捜査を始める。しかし、捜査に対して圧力がかかる。

 

真実に近づきつつある二人の耳に、法務大臣の死刑執行命令が発せられたとの知らせが入る。

 

通常は命令から5日以内に執行される。

 

冤罪の疑いが濃い。関根は誰かをかばっている。

 

命をかけてかばう相手とは?

 

関根は死刑執行命令が読み上げられ、両脇を刑務官に支えられ執行室へ向かう。

 

その時、顕真と文屋は・・・・・