5/8はゴヤの日
そんな誰かのつぶやきを見て、ゴヤの事が気になった今日この頃。
ゴヤといえば世界史でお世話になったこの絵
連作『マドリード、1808年5月3日』の一つ『プリンシペ・ピオの丘での虐殺』
スペイン独立戦争の悲劇的なシーンを描くこの作品は中学高校の時から鮮明に印象に残っている絵です。ピカソの『ゲルニカ』にも影響を与えた作品。
骸の横で今まさにその命を奪われんとしている人々の表情の鬼気迫る様。命乞いなのか手を広げて絶望する顔。自身を撃とうとする兵士を睨みつける顔。恐怖から顔を覆う人もいます。硬く握り締められた手。
悲惨な戦争の情景を描くこのゴヤとは一体どんな人なのか。
本名フランシスコ・デ・ゴヤさん。
ざっくりとその生涯を紹介します。
情熱の国スペイン🇪🇸で18世紀後半から19世紀にかけて活躍した画家です。
でも若い頃はなかなか芽が出ず苦労を抱えていたそうです。そんなゴヤさんが注目されるようになるのは40代になってから。ようやく当時の国王から宮廷付きの画家として任命され、その地位を認められます。遅咲きだったゴヤさん、この後も苦難は続きます。宮廷付き画家に任命されてしばらく後、不治の病に侵され聴力を失ってしまいます。しかしその後も精力的に作品を作り続けた不屈の人。
スペイン独立戦争の後は、スペイン内部の自由主義者に対する弾圧から逃れるためにフランスに亡命し、その生涯を終え、まさに波乱に満ちた一生を送った人でした。
自画像は仏頂面で怖いおじさまですが、パレットと筆をしっかりと構えるその姿勢は不屈の画家を体現しているように見えてきます。
調べてみると、若い頃の作品は肖像画など明るく華やかなロココ調の作品が多いのですが、聴力を失った後は暗く、黒く、重たいテーマの作品が増えてきます。でも今日僕らがよく目にする作品はほとんどその後期の作品だと思うと、音を失うという出来事が、ゴヤさんにとってさらに写実的な観察眼を磨き、作品の切れ味を増す要因となったのかもしれません。
有名な作品を少しだけご紹介。
まずゴヤがその写実性故に物議を醸した
『裸のマハ』及び『着衣のマハ』
なんともエロティックな作品なわけですが、『着衣のマハ』の方はどうぶつの森で『いいかんじのめいが』として出てきてるんですよね、、、任天堂、、、
んで、この裸のマハ、陰毛を描いた世界初のヌードということで、ゴヤさん異端審問にかけられてしまうんです。カトリックにおいてヌード絵画は宗教的な意味合いが強く、こういう世俗的な裸婦画は初めてだったそうな。でもそれがゴヤさんの写実性への挑戦なんでしょうね。
それからゴヤさんの有名な作品群が『黒い絵』
宮廷画家を引退したゴヤさんが「聾者の家」と呼ばれている自宅で壁に描いた作品群なんですが、誰に見せるでもなく、タイトルすらつけることも明かすこともなく、完全に私的な作品だったそうです。どれも背景が黒く、作品のテーマもオカルティックなものや不穏な心地になるものばかり。
そんな14ある作品のうち特に有名なのは
これ!
『我が子を喰らうサトゥルヌス』正直めちゃくちゃトラウマになる作品。ホラーですよこんなん。
ギリシャ神話の創造期に神々の父クロノスが我が子の反逆を恐れて食べちゃうっていうショッキングな作品。
ひんむいた目ん玉といびつな体つきが、どんどんどんどん不安な気持ちにさせてきます。
建物の入り口入って正面の壁にこの絵画は飾られていたそうで、ゴヤさんを訪ねた人たちはさぞびっくりしてたんでしょうね。
僕が黒い絵の中で好きなのがこの『魔女の夜宴』という作品。
羊の頭を被った??人を囲む魔女たち。「ベルセルク」のワンシーンを思い出してしまいます。
実はゴヤさんはこの作品よりも前の時代に魔女をテーマにした作品を描いていて、そちらも好きな作品。
魔女が囲むのはもはや山羊そのもので、被り物をした魔女たちは飛んじゃってる。並べてみると『魔女の夜宴』よりオカルティックな絵ですね。
そして、最後に紹介するのは『黒い絵』の中でも異色を放つこれ。
タイトルは『砂に埋もれる犬』とついているんですが、もちろんゴヤ自身がつけたものではないんです。
写実的に物事を捉えて絵の中にそれを描いてきたゴヤの作品の中では異彩を放っているこの絵。どう見るかは今となっては完全に僕らに委ねられてしまっています。
蟻地獄のような砂の壁に阻まれた黒い犬。でも彼は特に暴れたりするそぶりは見せずただ静かに飲み込まれるままにしているように見えます。
抗えない運命の渦からは逃れられない、そんな絶望的な気持ちにさせられる作品。
あなたならこの絵をどう見ますか?