「スプリット」見て来ました。
DID解離性人格障害を持った犯人と誘拐された3人の少女の闘い。
※ネタバレ含むのでお気をつけください。

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解離性人格障害というと現実の話ではビリー・ミリガンを思い浮かべてしまう。作中もスポット(照明)や椅子などビリーミリガンのケースの影響を強く感じるところがある。しかし今作焦点が当てられるのは単なる多重の人格ではなく人格ごとに身体能力やアレルギーすらも変化してしまうということ。これが物語のキーともなります。作中では超人と呼ばれる人々の存在を使って説明していますが、実際クライマックスでは信じがたい驚異的な力が少女達に猛威をふるいます。ショットガンにも耐えうる皮膚なんて到底まともとは思えません。

恐ろしいのはジェームズ・マカヴォイの演技。23の人格全てがスクリーンに現れるわけではありませんが、その演じ分け、さらには複数の人格が矢継ぎ早に現れるシーンまで完璧に別人を演じ分けます。さらには他の人格を真似する人格もいたりして。その微細な特徴を全て丁寧に描く演技力が凄まじいです。スキンヘッドのビジュアルも相まって不気味さが際立ちます。

この作品を見ていると恐ろしさを感じるとともにケヴィンに対しなんとか救われてほしいという気持ちも同時に浮かんでしまうのです。ケヴィンの知らないうちに全ての犯罪は起こってしまい、それを目にしたケヴィンは自分を殺してくれと主人公に頼む。防衛のために生まれた人格が彼を苦しめてしまう。そこに救いの手が差し伸べられてほしいと願うばかりです。ケヴィンに死が迫った時、パニックになって次々と現れた他の人格達の必死の懇願も胸が痛いです。

もう一つの今作の見どころはアニヤ・テイラー=ジョイ演じる主人公ケイシーの過去。一見本編とは無関係に語られて行く過去が次第に明かされるにつれ、彼女の冷静で鋭い洞察力に奥行きが出てきます。ケイシーの子供時代を演じた少女もすごかった。無垢な笑顔が冷徹な眼差しを放つようになるまでの変化が怖かったです。

シンプルなストーリーながら異様な不気味さをもたせたシャマラン監督の最新作。面白かったです。

優雄斗