↑なんと二重カバー

 

 

「落日」は、湊かなえ著のミステリ小説で、15年前に起きた「笹塚町一家殺害事件」の真相を追う、新進気鋭の映画監督と若手脚本家の物語。2019年の作品。

 

湊かなえは、よくドラマ化される作家というイメージがあり、2時間ドラマなどのミステリをあまり面白いと思ったことがない私は、今まで読むのを避けていた面があった。
しかし読んでみると、まぁ、なんというか。人物の深い描写や次第に明らかになる背景、それぞれの思考の変化、「知ること」に対する様々な見方、考え方、などなど。
自分のつたない表現力ではとても表しきれない深い物語が、そこにあった。

ただただ夢中になり、一気に読まさせていただきました。

この物語の主題は、犯人捜しではない。それより気になるのは、何があったのか? 真実が知りたい。
事実とは?
真実とは?
実際に裁判を傍聴した結果を例に、事実と真実の違いを分かりやすく解説してくれている。辞書とは違う、湊かなえ流の解釈か。でも、しっくりくる。

私は、現実世界においては、真実は知りたくない派。それより、自分が実際に目で見て肌で体験してきた事実。こちらを重視する。
私が見えていない部分が見えたところで、それは私には影響していないだろうから。
でも、それは関わりが浅いが故なのかもしれない。真実を追い求めていくと、違った景色が見えてくるのだろうか。

ラストは、非常に後味よくさわやかに終わる本作品だが、湊かなえをネットで検索すると「イヤミスの女王」(後味が嫌な気分になるミステリの略らしい)と呼ばれているとか。
たまたま手に取った本が当たりだったのか。
でも、また次を読みたいと思う魅力がある。ぜひ、別の作品を読んでみたい。

 

 

#ミステリ小説,#湊かなえ