2012山陰36 奥田元宋・小由女美術館 | 楢丁(YOUTEI) 旅の話

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趣味で書きためた旅日記が、膨大な量になりました。2020秋に脳出血、2023には食道癌を発症と、様々なことが起こりますが、克服してまた旅に出たいという気持ちは変わりません。
お付き合い頂けたらありがたいです。どうぞよろしく。

 

 

8/18(土)②

 昨日テン場探しで立ち寄った、「県立公園」は9時オープンのはずだったが、30分ほど前にはすでに駐車場が開いていて、もう何台も車が停めてある。カルチャーセンターのある、第5駐車場に入り、近くのベンチで朝食と日記書き。昨日買った梨はまずまず、ワッフルとブルーベリーはベストマッチ、いくらでもいける、とはメモの記述だ。


 目の前の地面には、何か地形のモデルのように白い図があるな、なんだろうと思っていたら、これがだんだん膨らみはじめた。あれ、と思っている間に小山のようになり、こどもたちがやってきて、飛び跳ねたり滑ったりして遊びはじめた。その様子を何枚か写真に収めたが、その中に植田正治を彷彿とさせる(とは言いすぎか)、子供らの姿を捉えたものがある。トリミングでもすれば、ちょっと面白い作品として見られるものになるかも知れない。

 

                ぺちゃんこだった白い地面が膨らんで、こんなものになった


 洗濯物を回収して、「奥田元宋・小由女美術館」へ。「三次ワイナリー」とともに、小高い丘の上に立つこの美術館は、曲線を活かした建築が秀逸。満月の夜には催しがあるというが、きっと月とともにある美術館の姿は、さらに美しく映えるのだろう。


 企画展は「ハンス・フィッシャー展」。この人のことはほとんど知らなかったが、スイスの絵本作家という。ちょっと見には、殴り書きに近いくらいの線描に、荒っぽい色づけと表現してもよさそうな絵のくせに、実にうまいと思わせる造形力の確かさがある。

 

                    ハンス・フィッシャーの絵は魅力がある


 代表作が「ブレーメンの音楽隊」。へえ、こんなストーリーだったのか、という驚きがあった。他には「ねこのピッチ」「いたずらもの」など。絵本原画の他に、大きな壁画も展示されていた。本国では、絵本ばかりでなく、多方面で活躍する芸術家として知られているというが、なるほど絵のセンスは抜群。独自の世界が広げられ、絵本のイメージから離れることはないにせよ、思ったより見応えのある展観だった。


 併設のレストランは「洋食工房」、ネーミングはいただけない感じだが、美術館のイメージそのままの洒落た店内、割合オシャレをしたおばさん方で、もう席は8割方埋まっていた。¥2000のランチコースを注文。以下メモをそのまま記載する。

 

 「前菜 海鮮サラダ(サバ燻製・スモークサーモン・野菜・正体不明の和え物・他)+スープ(ミネストローネ)+メイン(肉:ビーフシチューor魚:鯛とエビの何とか)+パンorごはん+デザート(フルーツとナッツの載ったケーキ+抹茶アイス)+飲み物(章子:山ブドウジュース、將人:コーヒー)、これで¥2000!?という内容。こういうのが入間市の博物館にもあればなあ、というのはたぶん無理、隣接するワイナリーと併せてかなりの観光客が訪れるところだからこそ実現できるとみた」。 

 

              この内容のコースで¥2000!


 食後に常設展示のスペースへ。奥田元宋の紅葉の描写は、確かに大したものといえようが、もう一つ見た後の充実感に乏しい。日展で活躍した、というが、そんな保守本流の大規模展作家の限界、といったところを示しているのかも知れない。


 それよりも、小由女の人形にはどうも感心しない。肌合いや衣装その他の色彩の美しさは認めるにやぶさかでないが、人形の表情に魅力がない。たとえば、写実彫刻や仏像を研究したあげくの葛藤、のようなものも一切感じられず、物足りなさが残るのだ。ぐっと引き込まれるような深みに乏しい、という言い方も出来る。これらは優れた仏像彫刻などに例外なく備わっているものだ。これを個性、といってしまえばそれまでだが、その世界ではどのように評価されているのだろう。おまけに、この人には「芸術院会員」という肩書きがつく。そうなると、これで?と疑問符がいくつかチラつくのもやむを得まい。もちろん個人としての勝手な意見だけれど、まあ、こういった肩書きなどというものは、多分に政治力が必要、みたいなところもあるやに聞くし、世間なんて、そんなものかも知れない。


 あまり期待せずにワイナリーへ。章子が試飲役だが、どうもダメらしい。何も分からない人が好む甘口のものを主力にせざるを得ない、ということは一応理解する。一方において理想とするものを追求する姿勢は是非欲しい。そしてそれを普及価格帯にも、ということを忘れずにいてくれ、とは我々の願いである。

 

                  三次ワイナリー


 

 

2012夏 山陰の旅第2弾 37につづく