2021 夏 京都の旅17 京都市水族館2 | 楢丁(YOUTEI) 旅の話

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趣味で書きためた旅日記が、膨大な量になりました。2020秋に脳出血、2023には食道癌を発症と、様々なことが起こりますが、克服してまた旅に出たいという気持ちは変わりません。
お付き合い頂けたらありがたいです。どうぞよろしく。

2021 夏 京都の旅17
京都市水族館2

8/19(木)③
 「京の海」というのも、日本海側の宮津とか舞鶴の方、というのは考えれば分かることだが、関東の人間にとっては、京都と海というのがすぐに結びつかないのが普通だ。


「京の海」大水槽


 これがここで一番の大水槽だが、美ら海水族館や海遊館を見慣れた目には、さほどのインパクトを持って映りはしない。しかし、イワシの群れや、エイがたくさんいるところが特徴的で、様々な側面から魚の生態が観察できるウインドウの設計は、よく考えられたものと思う。


「京の海」大水槽はいろいろな角度から楽しめる。この写真はどうやって撮ったのか謎!

 クラゲの展示は大変充実した美しいものだ。照明も工夫され、集団で見せる種と、単独の方が映えるものとがよく考えられていた。中に入って周囲が全てクラゲになるブースも作られ、遊び心も満載。

 

近頃、クラゲはブームらしい

 

 「京都クラゲ研究部」と銘打って、幼生の段階からだんだんと成長していくさまを、実験施設のようなインスタレーションで見せるブースもあった。

 

京都クラゲ研究部

 

 鶴岡の水族館がクラゲに特化してブームになったのに学んだ可能性はあるが、各地のいいところを取り入れて、全体がレベルアップしていくのに反対する理由はない。

 

鶴岡にある加茂水族館を訪れたときの記事


 続くのが「デザインと魚」という、これは期間を区切った企画だったろうか。無機質な立体アートが入った水槽と、これに絡むのが生き物である魚やエビといった、その関係性が面白い。彼らの居心地がどうなのかは分からないが、自然のありようを再現する方向とは真逆の発想、しかしこれはインテリアのアクアリウムとして発展する可能性を秘めている。ただ、デザイナーの意図したとおりに行動する魚たちばかりであるはずはなく、中にはすっかり当てが外れてしまった水槽もあった。ひとつ、これの反省に立って、よりよいものを生み出してもらえれば、と願う。






「デザインと魚」という展示

 ペンギンは広いスペースに、60頭近くが飼育され、その全ての名前、性格などが写真とともに示された解説が壁一面に貼り出されている。クラゲの場合と同様、飼育員による詳細な解説が面白い。

 

 これなど、蒲郡の竹島水族館がパイオニアじゃないかという気がするが、リピーターを生む戦略として、大変有効と思われる。1回来てみただけの人間にはさほどの意味はないにせよ、年間パスを買い、何度も訪れて、より深い観察に至るという方向の楽しみ方もあるはずだ。人口の多い都市部に近い施設なら、とりわけこの戦略は有効だが、京都のように観光客が多く、中でもインバウンドの効果を狙うのなら、QRコードなどを活用した外国語の、あるいは一歩進めて音声解説が実現できれば、更に素晴らしいサービスになるだろう。


ペンギンには一頭一頭、ちゃんと名前が付いて、それぞれに飼育員の解説が

 いずれにせよ、これまで影の存在だった飼育員が、このような形で直接、間接を問わず観客にアピールする、という試みはどんどんやってほしいものだ。なにしろ、飼育している魚や動物を、一番よく理解しているのが彼らなのだから、その知識や経験を活かさない手はない。


ここでの飼育員は影の存在ではない

 イルカのショーはこのコロナ禍で中止しているが、丁度ジャンプなどの演技を練習しているところに出くわした。その姿を客席に座って眺めていたが、十分、ショーに匹敵するものになっていたと思う。


イルカのショーはやっていないが、練習風景だけでも見応え十分

 それにしても、外は時折、傘も役に立たないほどの豪雨。館内から公園の様子が見えるところが何カ所かあるが、そんな光景を目の当たりにすると、外に出たときのことが思いやられる。

 順路の最後は、広くとられたカフェ兼用のスペースに併設されている、絶滅が危惧される淡水魚の水槽が並ぶコーナー。これを見るにつけ、身近にあった里山や田んぼ、あるいは小川のような、かつて当たり前と考えていた環境が、急速に失われつつあることに思いは至る。水族館の使命として、種の保存に乗り出した、という文言が、その深刻さを物語っているようだ。 


これは順路の最後の方にある風鈴の展示風景

 ここから一階に降りると出口だが、建物を出ると池や田んぼの造られた庭園がある。しかし雨がひどく、とても楽しめる状態でないのが残念。


池や田んぼの造られた庭園。雨が強く、見て回れず



2021 夏 京都の旅18につづく