2023大阪の旅52 「やまぐちめぐみ」のこと | 楢丁(YOUTEI) 旅の話

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趣味で書きためた旅日記が、膨大な量になりました。2020秋に脳出血、2023には食道癌を発症と、様々なことが起こりますが、克服してまた旅に出たいという気持ちは変わりません。
お付き合い頂けたらありがたいです。どうぞよろしく。

2023大阪の旅52
「やまぐちめぐみ」のこと

1/8(日)
 叔父さんと哲ちゃんのお宅に上がってこたつに足を突っ込み、ひとしきり話した後だった。叔父さんは絵本と画集、それに雑誌を一冊出してきた。画集には「やまぐちめぐみ作品集」とある。「めぐみ」さんは叔父さんの娘にして哲ちゃんのお姉さん、だから章湖にとっては従姉妹にあたる。


「やまぐちめぐみ作品集」、奈良美智が帯に文を寄せている


「東京でめぐみが死んで、こっちで葬式を出したんだけど、東京からはそんなに人は来ないと思っていたんだ。だけどね、びっくりしたよ、200人も来たんだから。向こうで何をしていたんだかよく知らなかったけれど、もともと、子供を捨てて出て行ったのだから、オレは許さなかったのだが…」と話すこの人の顔からは、なんとも複雑な感情が読み取れた。

 何か、宗教がらみで子供を捨てて出奔したらしい、というニュアンスで章湖から聞いていたオレは、突然の話に面食らった。

 

 ここで叔父さんの口から出たのは、料理家のエダモトなんとかいう人の伝手で転がりこんで当初は共同生活、当時東京の中野にあった、「カルマ」という喫茶店で働きながら絵を描き始めた、というような話だったと思う。

 

 ああ、「枝元なほみ」かと、オレでも知っている名前が出てきた。背景に何があるのかは分からなかったが、死因は、いわゆる難病だった、ということだ。

 画集をめくってみると、本格的に絵の勉強をした、という風には見えないながら、ちょっと哀愁を帯びた感じに見える人物や、瞳の奥に何かを訴えかけているような子供の絵は魅力がある。本の帯には「奈良美智」の推薦文が載るが、叔父さんはこの世界的な美術家のことをよく知らないみたいだった。


やまぐちめぐみの作品(下記サイトより転載)

 

 

 「コトリちゃん」という絵本は、とうとう完成まで描けずに亡くなった「めぐみ」さんに代わって親交のあった絵本作家「とりごえまり」が加筆、最後の1ページは書き下ろして完成させたというものだ。それともう一冊は「暮しの手帖」、これには「やまぐちめぐみ」を巡る記事が数ページに渡って載っていた。



「コトリちゃん」

 章湖も初めて聞くことばかりのようで、つまりは二人して驚いた、という次第。

 このあと、哲ちゃんの部屋見せてよ、ということになった。案内されたのは2階、いやもう一つ上の、天井が斜めの小部屋だったが、趣味のルアーを手作りする机と、割合最近揃えたらしいレコードプレーヤーを含むオーディオ装置があった。昔買ったレコードがある、というのが動機になったようだが、オンキョーのアンプに、B&Wの、あれはCM1くらいのスピーカーだと思うが、これが手作りのスピーカースタンドに載っていた。その狭さが余計に趣味の部屋らしい雰囲気を出しているが、前に目撃した章湖によると、別室にあるというロッドやリールのコレクションも相当のもののようだ。

 釣りのターゲットは、四万十川河口の「アカメ」だという。10年通って3匹しか釣れていない、と自嘲気味に話したが、アカメは幻の魚といわれるくらいだ。しかし、よくそんな魚に狙いを絞ったな、というのが正直な感想。渓流釣りの場合だったら、サクラマスとかサツキマス狙い、というのに似ているが、それよりもっと難しい魚と思う。

 

 



2023大阪の旅53 三田屋本店につづく