2023大阪の旅17 国立国際美術館 | 楢丁(YOUTEI) 旅の話

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趣味で書きためた旅日記が、膨大な量になりました。2020秋に脳出血、2023には食道癌を発症と、様々なことが起こりますが、克服してまた旅に出たいという気持ちは変わりません。
お付き合い頂けたらありがたいです。どうぞよろしく。

2023大阪の旅17
国立国際美術館

1/4(水)⑨
 一旦中之島美術館から出て、路地を渡ったお隣にあるのが国立国際美術館。その後ろにそびえる大きな建物は科学館だ。周囲の景色を映す銀色の、何十本というステンレスの柱が複雑な造形を作る、まるで現代美術の作品のような、一体これが建物だろうか、と思わせる方が美術館である。

 

   形容するとすれば、巨大な竹細工のようなこのステンレスのオブジェは、デザイン以外に建築の構造物としての役割を果たしているようには見えなかったのだが・・・。

 

国立国際美術館


 エレベーターを降りると、展示室に入る前のスペースは広く、いくつかの作品が置かれ、そしてここだけは撮影が許可されていた。赤く塗られた丸太が円錐状に組まれた作品は、中から覗いてみようとしたら係員に制止されてしまった。見上げた景色がどうなのかを確認したかったのだが。このような造作はある種、祝祭の連想を呼ぶ。


展示室前のスペース。左手奥にあるのが文中の作品


 天井から吊されるタイプのモビールもあった。今の目で見れば珍しくもないが、果たしてこの形式が生まれたのはいつ頃からだろう。壁面には白髪一雄の作品。この人の表現は、広いスペースに負けないだけの力を持っている。


​​​​具体美術協会の作品。これはモビールと呼べるかどうか微妙なところ

 こちらには、最初の会場になかったタイプの、部屋を薄暗くして、照明を使った立体作品などもあり、2館の間には若干の差別化はあった。しかし、展示のコンセプトとして、中之島美術館のは「分化」、こちらは「統合」とあったはずだが、そのような印象を受けることはなく、土台、これには無理があったというべきだろう。展示作品はひたすら作家が他の影響から逃れ、個を、あるいは未知を追求した結果なのだから、そこに「統合」という言葉に象徴される、グループとしてのまとまりを見いだすことなど、出来るはずはなかろう。




国立国際美術館で最初に入った展示室。これ以降は中之島美術館と違い撮影禁止だった

 吉原治良というカリスマの元に結集した若いエネルギーが、丁度戦争の傷跡からの復興という時代の空気の中で、それぞれに燃焼する、その炎色反応の色彩の違いを存分に見せられた、というのが見終えての感想である。吉原の死と共に終焉を迎えたという「具体美術協会」だが、妙な形で存続しなかったのはむしろ幸いというべきだろう。活動を終えたのはある意味で、必然であったと言いうる。

 偉そうに書いてはみたが、こっちに来てからは、昼に飲んだ僅かばかりのアルコールの影響もあって疲労感はマックス、ともかく座るところを見つけようという気持ちが先行した。現に展示室から出た、はじめのスペースに椅子が沢山あるのをいいことにして、しばらく意識を失ったりもした。



2023大阪の旅18   国立国際美術館 新収蔵作品につづく