2018宇治10 お茶の店 | 楢丁(YOUTEI) 旅の話

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趣味で書きためた旅日記が、膨大な量になりました。2020秋に脳出血、2023には食道癌を発症と、様々なことが起こりますが、克服してまた旅に出たいという気持ちは変わりません。
お付き合い頂けたらありがたいです。どうぞよろしく。

2018春の旅 宇治 醍醐 黄檗 坂本(3/26~30)その10

 

3/28(水)④
 今日の目標は平等院にとどまらない。門前の通りに軒を並べる、お茶の名店で玉露を買おう、というのが次なる目標である。まずは「上林三入」。隣は「かんばやし」という店だが、ルーツは一緒だろう。単なるのれん分けなのか、あるいはどこかで確執が生じたか。

 

手前が「上林三入」、その奥が「かんばやし」


 上林三入を覗くと、外国人の店員もいるし、小学生くらいの子供までが店に出ているじゃないか。おそらくここの跡取りなのだろうが、健気に客を招き入れている、その姿にほだされ、奥のカフェに入る事になってしまった。

 

「上林三入」の店奥にあるカフェで一服


 今回の目的は玉露のはずだが、カフェでは抹茶を頂くことにする。「初昔」と「はつむかし」、漢字と仮名の使い分けで茶の等級が違うという。メニューを見ていると、ついぜんざいも食べたくなり、一つはセットで注文した。抹茶の等級による味の違いは微妙だが、等級が上の方が雑味が少ない、という表現でどうだろう。ぜんざいの甘みは適度だが、台湾で食べたようなスイーツを取り入れる店は出てこないだろうか。

 

スイス人の店員さんは自在な日本語を操り、茶に関する知識も豊富


 店頭ではやはり玉露を物色する。大体¥2500くらいだと、玉露としては中の下くらいに当たるようだ。丁度その値段ぴったりのがなく、¥3000見当のを一本購入することにした。外国人の店員さんが説明をしてくれるが、どこだったかに中国語の説明があり「瑞士」と書いてあった。つまりこの人、スイス人のようだ。日本語は上手く、茶の知識もしっかりしていた。


 この店の2階は資料館になっている。そこには「上林」の店の系図やら、店の歴史が写真を交えて展示されていた。この店はどこかで本家と分かれているようだったが、それは店の優劣とは関係のないことだ。当然ながら、現在生産しているお茶が優れているかどうかで勝負が決まるはずだが、京都という土地柄での見方はどんなものだろう。我々が思いもしないような視点での“家”の評価もあるのかも知れない。

 

充実したHP

 

 隣の「かんばやし」にも入ってみる。こちらは隣より地味な印象だが、ここの玉露は7~8種くらいにランク分けされていた。少なくとも隣より細かい分け方ということだ。そこでやはり隣と同じ¥3000クラスのを購入。

 

こちらもなかなかの内容

 

この店が一番賑わっていた


 もう一軒、間口の広い、筆文字のチラシがたくさん貼り付けてある店に入ってみるが、ここでは玉露の品揃えはごく少ない。客でごった返しているこの店だが、何千円もする玉露の高級品がそんなに出るはずもなく、主力にはなり得ないのは明らかだ。大体、昨日匠の館で教えられたような作法など、ペットボトル全盛のこの時代、そうそう普及するものとは思われない。


 宇治橋を渡り返して再び右岸へ。


 昨日、宇治神社には詣でたが、その時、奥の宇治上神社は門が既に閉ざされていた。そこで今日は参道を行くと、神社の少し手前にあるしだれの桜がまことに美しい。皆さんもそう思うらしく、ここは絶好のフォトスポットとなっていた。

 

参道のフォトスポット


 宇治上神社の本殿は屋根がちょっと変わっている。裏側から見るとそれに気づくのだがこの様式は見た覚えがない。いずれにせよこの神社、古式ゆかしい雰囲気をたたえた、いかにも古来からここにまします、といった気分満載の神社であった。

 

ここが宇治上神社だったかな?

 

なかなかに興味深い記事を見つけた。事前に読んでいれば感想はまた違っていただろうと思われた

 

 この先に、「伊右衛門」で有名な福寿園がある。ちょっと裏道の住宅街を散策したあと、この福寿園に入ってみる。

 

有名な福寿園


 いかにもおしゃれな店だが、意外にもこちらの思うような玉露の高級品は置いていない。むしろティーバッグの詰め合わせなど、きれいな包装とともにパッケージングされたものが主力のようで期待はずれ。伝統を墨守するだけではこの時代に生き残れないということだろう。


 ペットボトルのお茶に名を載せて全国にその名をとどろかせる、そんな手法にこの店の姿勢が現れているとみるべきなのかもしれない。しかし一方で、本格を志す気持ちも忘れてはいけないはずだ。もっくん扮する伊右衛門のご主人の、一心不乱にお茶を追求するCMに現れた姿は、少なくともこの店からは感じ取れなかった。


福寿園2階の展示スペース


 二階はレストラン、こちらは結構賑わっている様子、奥には現役を退いた茶の製造機械が展示されている、いわば博物館の様相を呈していた。


 車を駐車させてもらった興聖寺に戻り、出発するが、例によって道に溢れる観光客を避けながら宇治川づたいの小径を進むのは、いわば苦行に近い。

 


 

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