2019春の富山9 粋寿司~勝興寺 | 楢丁(YOUTEI) 旅の話

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趣味で書きためた旅日記が、膨大な量になりました。2020秋に脳出血、2023には食道癌を発症と、様々なことが起こりますが、克服してまた旅に出たいという気持ちは変わりません。
お付き合い頂けたらありがたいです。どうぞよろしく。

2019.4/1~6 春の富山 その9
粋寿司~勝興寺

4/3(水)③
 「粋寿司」は結局、高岡の市電沿いに店があった。市電の走る道の交通ルールがもう一つ飲み込めていないせいで、線路をまたいで右折する場合など、地元の車がどう動くのかを観察しつつ運転せざるを得ない。

 すでに13時半を回り、店は割と空いていた。白エビの唐揚げ、「氷見づくし盛り(特上)」¥1600を注文、8貫のセットだが、これが中々よかった。どのネタが何の魚なのかよく分からなかったが、一つは氷見牛、単品でならめったに頼まない品と思うが、これが旨い。

 

  エチオピアという名の魚が含まれていたが、ふっくらした身の、大変おいしかったのがこれだったと思う。それに比べ、ノドグロがいまいち、単品で頼んでいたら、値が張るだけにがっかりしていたのではなかろうか。皮がひと炙りしてあって、油が溶け出したのを頬張った、前に食べたときの感触が頭に残り、どうしてもそれと比べてしまうからだが、今回のは炙られていなかった。鯖や穴子もよかったし、章湖が特に気に入っていたのがカニ味噌だった。

 

                            富山名物、白エビの唐揚げ


                      氷見づくし盛り(特上)¥1600也。これは安い!


 カウンターの隣に座った若い女の子二人はすごかった。カニ、エビは食べられないから、と板さんに前置きし、もう、本当に躊躇も何もない感じでどんどん頼み、片っ端から平らげる。この人たちの後から会計をしたが、彼女らは¥7000以上払っていたのに比べ、我々は¥5300だった。

 この旅の出発前に、富山高岡近辺の情報を集めていて、行ってみたい古刹が二つあった。一つはここからはだいぶ離れた立山に近い「大岩山日石寺」だが、もう一つが射水にある「勝興寺」だ。ナビで検索して、それが指し示すところに向かったが、なんと、これが線路際に建つ小さい祠ではないか。

 車を傍らに停め、祠を見に行ったが、石の地蔵が一体入っているのみ、勝興寺との関連を示す手がかりは何もない。スマホで検索すると、今度はすぐ近くの小高くなっているところを表示した。さっき走ってきた幹線道路の左手には段丘状の丘があったが、その上のようだ。

 早速車に乗り込み、坂を上っていくと、果たして勝興寺と書かれた駐車場が現れた。しかし、寺域の周囲にあるのは、植え込みというよりは藪と表現した方がこの場合の形容としてはふさわしい荒れ様。境内にはとてもこちらから入れるようには思われず、藪に沿った小道を行くと、今度は構えが立派だが朽ちかけた民家がある。おかしいな、勝興寺はかなり大きな古刹のはずだが、と思っていると路地はまもなく表参道に出た。


               駐車場脇の境内との境。植え込みは手入れされている気配がない

 広い参道の真ん中には、大伴家持の銅像が建ち、ここが何かゆかりの地であることがすぐに分かる。家持がかつて国司としてこの地に赴任していた、ということは観光パンフレットにも記載されていたが、それで万葉集に関係する史跡があちこちにあるわけだ。「令和」の関係で、太宰府が盛り上がっているという報道がこの二日ばかり過熱ぎみだが、いずれここも注目されることになるのだろう。


                         勝興寺の参道に立つ大友家持像

 さて、ここから勝興寺の境内を見渡すと、何とほとんどの伽藍にはシートが掛けられ、大規模な工事の最中であることがわかる。せっかくここまで来たのに、という気持ちがまず先に立つが、ともかく境内に入ってみると、修復工事の最中にもかかわらず、受付の窓口が設けられ、拝観料¥500を払って内部を見学できることになっている。いや、拝観料ではなく、修繕協力費という名目だったはずだ。


                       今は趣も何もない、修復工事中の勝興寺

 見た目とは裏腹に、すでに工事は90パーセントが完了しているという話だったように憶えているが、「平成の大修理」と称して、実に20年を費やしての修理計画、2020年完成予定というから、なるほどこの数字が出てきても不思議はない。受付のある建物脇には、工事の仕様、修復箇所や進捗状況が写真入りの掲示物となって貼られているが、これだけ見せられても実態は中々頭に入るものでもなかった。


                                  修復計画図

 巨大な本堂は内陣も豪華絢爛だ。浄土真宗の寺と知って思い浮かべるのは西本願寺、その系列寺院となればこれも頷けるというもの。示された順路に従っていくと、本堂脇には蛙股近辺の組み物が展示されていて、間近に見るとその規模の大きさがよく分かる。

                                豪華絢爛の内陣

 

                           欄間の造作も素晴らしい



              蛙股近辺の組み物が展示されている。間近に見ると大きさにビックリ!

 外から見たときにシートが掛けられていた建物の内部だろうが、それらは廊下でつながっていて、かなり長い距離を歩いた実感がある。気温は相変わらず低く、スリッパの足が冷えたのがそれを助長したのだろう。しかし本堂以外にはそれほどの文化財も見られず、がらんとした座敷や書院、そして台所等を見て回ることになった。もっとも、調度品は工事の最中であればどこかに収蔵されていることも考えられ、あの本堂を思えば、他に文化財が何もないということは考えづらい。

 

                               ガランとした堂内

 

  しかし、一時期、かなり荒廃したのではないかと疑われる痕跡も多数見られ、さっき駐車場から見えた寺域周辺の景色がこれとシンクロした。

 


                          かなり痛んだところも散見された

 木造の大きな建物を支えるのに、新たに鉄の柱が立てられていたり、鉄骨が入れられ、梁を支えている様を見るにつけ、オリジナルの状態に修復することの難しさを考えさせられた。

 

                           鉄骨で支えが入っている

 

  一方、ふすまの引き手などの小さい調度品は、オリジナルの意匠を再現すべく、相当の努力がなされているのが窺われ、恐らくは限られた予算内での修復計画を立てるのに、かなりの葛藤があったことだろう。



                                念入りな復元

 かつてここは庭園だったろうに、と思われるスペースがあった。僅かな痕跡からの判断だが、現在は、無造作に資材が置かれている状態。ここに手が入れられることになるのは、建築物の修復が終わった後だろうと思われた。すっかり修復成った後に、この寺を再び訪れる機会があるだろうかなどと考えつつ、勝興寺を後にした。


2019.4/1~6 春の富山 その10 万葉歴史館につづく