ダンスは音が先です。


音を聞いてから、動くということ。
早取りは死刑です。




フロアにて。
聞いたことのある曲がかかっているとつい、
「この曲のこのタイミングの音が良いんだよな、それに合わせてポージングを、こう!」
などと考えた結果、狙いよりかなり早いタイミングでポーズしてしまい台無しに。。

相当レベルの高い人でも、やってしまいがちです。
「見せつけてやる」という気持ちがハヤり過ぎてそうなるのでしょうか。




早取りとは、表現すべき音をまだ聞いていないということ。
聞いてもいないのに動いた、それは音楽表現とは言えません。
ダンスとは音と動きが一体となって人に感動を与えるもの。

コンマ数ミリのズレであっても、早取りはバレます。
素人でも観ててわかるくらい、不自然。


遅取りは、「ディレイ」という、名前のついた表現技術があるなど、
受け入れられたりしますけどね。





音が聞こえてから動くのが正解。


「とはいえ、聞いてからだとさすがに遅過ぎない?」と不安になるかもしれません。が、

試しに、比較的リズムの取りやすい曲の「ワン!」のタイミングで手を上げるという遊びを、
仲間と見せ合うなり動画に撮って見るなりしてみてください。

信じられないくらい早取りしていた、という人が多いと思います。

逆に、自分でも遅過ぎると思うくらいのタイミングで手を上げてみると丁度良く見えたりするもので。



さらに、不思議に感じられることですが、
曲と振り付けを事前に合わせているものや、何度も聞いたことのある曲であれば、計算して「ワン!」で完璧に合わせられるはずなのですが、
合っているはずなのに、観る人には不自然に見えてしまうのです。
例えるなら「おい」と話しかけて「お」で振り向かれるとビックリする、、ような感覚でしょうか。変ですよね。





音が聞こえてから体が動き出すまでのタイムラグは個人差があります。

マイケル・ジャクソンなどは、音が直接筋肉を動かしているのか、いや体から音が出ているのではないかと錯覚するほどこのスピードが速いですし、
ルカ・バリッキはわざととしか思えないほど遅い。

しかし、音を聞いていないなんてことは決してない。
音を聞いてさえいれば、このタイムラグの大小は個性・表現の幅の範疇であると言えます。


ボールルームの場合、
リーダーがアクションして、パートナーがそれを受けてリアクション、動き出しを感じたリーダーがさらに追従というコミュニケーションが交わされるので、もう少し複雑になりますが、
だから’予備動作'というものがあるのですが、

このタイムラグはダンサーごとの大切な個性。
このズレがグルーヴを生むわけで。



「遅れる」ことを恐れて、計算で一歩目の「ワン」を出すダンサーのなんと多いことでしょう。
ダンサーは、自分で思っている以上に「今ここ」の音を聞けておらず、頭の中の音を聞いてしまっているのです。
これでは、パートナーとも観ている人ともコミュニケーションたり得ない、音楽表現にはならないわけで。


口を酸っぱく主張しますが、
音が先。
早取りは死刑。です。





例外をいくつか上げますと。

パソ・ドブレやタンゴで、アペル、強く床を蹴るというか踏んで音を鳴らす表現がありますね。
あれは、わざと早くやってる人が多いです。

一歩だけわざと早取りすることで生まれる違和感と足音、
観客は一瞬目を奪われます。
その後すぐのプロムナードの一歩目やコントラチェックといった決め技を、自信満々でオンカウントで見せつけることで大きく加点となるわけです。非常に効果的。

ただ、私の今回の文脈からすると、アペル自体が音楽表現ということではないと、分かっていただけると思います。





大人数でのダンスの最後の決めポーズだけ「せーの」で決め打ち。
これは、事前に振り付けを決めて、充分にリハをしてのパターンですね。

音楽を聞いてお互いを見ながら踊れば動きは合うものですが、
最後の、音楽の終わるタイミングだけ「はずして」観客を驚かせようという狙いです。練習が必要ですが、これも素晴らしい。
私の文脈だとこれは「はずし」になるわけですね。






もう一つ。
これは本質的ではない、裏技的なやつなのですが。。

ある程度大きな舞台やフロアでは、ダンサーと観客が数十メートルくらい離れていることもあるのではないでしょうか。
体育館とかだと100メートル近く離れていることも?

花火の光と音がズレる現象が起こります。

会場の複数のスピーカーあるいは生バンドから音が放たれ、ダンサーの耳に届いた後、さらに離れた場所の観客の耳に入るまで、
空気中の音速って秒速300メートルくらいでしょうか?
0.1〜0.2秒くらいズレるのです。
このズレは曲が流れている限りずっと続きます。

0.1秒のズレは、意識は出来ずとも必ず気づきます。素人の観客であっても。

であるので、ダンサーにとっては音を聞いてから0.1秒くらい遅く動き始めるくらいで、観客にとってはちょうど良くなるという計算です。
う〜ん、ズルい。




今日は音取りについて話してみました。
音が先。早取りは死刑。
少なくとも私は口を酸っぱく主張してきたのですが、、


が!
最近また違った音楽へのアプローチがありまして。
この話、次へ続きます。


「神よ、願わくばわたしに変えることのできない物事を受け入れる落ち着きと、変えることのできる物事を変える勇気と、その違いを常に見分ける知恵とをさずけたまえ」〜カート・ヴォネガット〜




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