昨日は沢山の作品をご売約頂きまして、誠に有難うございました!!感謝御礼を申し上げます。


思考を文章でまとめることは、とても良いことですね。でもいつも文章はしっくりこないと、僕はあまりブログには出しません。それが、今できることだから展示を通してちょっと自分なりに気持ちがふつふつと湧いたのだと思っています。気持ちというのは、沸かせるものではなくて、内側から湧いてくるものだと改めて再認識させられます。本当にありがとうございます。


僕は芸術は、何のためにあるのだろうとずっと考え続けていて、未だに答えが出ないままですが。一つはやっぱり、生活に彩りを持たせることが大切だと思っております。芸術は、生活には必要ないものかもしれません。必需品かと言われればそうではないかもしれないというお話です。僕たちは、お笑いや音楽がなくても生きていけます。しかし、芸術やお笑いや音楽が無い世界というものは、少し寂しい世界になってしまうものだとも思っています。僕のつくる芸術は、何だろうと考えてみた時にノスタルジーや郷愁という言葉がよく呼び起こされる事があります。このことは、実は自分ではあまり意識していないのですが。僕は特別に観光の名所だとか、街のシンボルだとか、を余り書いていないような気がするのです。題材として取り上げるのはもっと身近なものであったり、何でもないようは日常を取り上げているような気がします。それは、自然に行われています。


しかしそれは、鑑賞者があたかも深澤のフィルターを通した世界が自分のみた風景の記憶と重なったり、何だか懐かしいなぁ、と思わせる何かがきっと僕の絵にはあるのだと思っています。僕は、いわゆる誰しもの中にある「原風景」を描いている気がするのです。そういったものは、やはり自分自身の心が動かないと描けない世界であります。


例えば僕にとって自分の作品は、生きた「なまもの」の様なものだと思っていて、作品の「鮮度」が落ちてしまうと自然と絵が描けなくなってしまいます。僕の代表作の中に『舞い散る豊島の桜』という作品があります。この絵も絵は後になって思うのですが、もうその時にしか描けない作品だなぁ、と改めて後になって思うんです。その様な環境や感覚や当時の私の年齢に応じて描けるものが変わっていくというのも、一つ面白い点です。なので、常にその時の絵は僕にとって一期一会ということなんです。


2020年作


その時に引いた線や色使い、絵の具の厚み、構図に応じてももう2度と同じ絵が描けないのはとても不思議なことです。1日1日は、ちょっとした変化なのかもしれませんが、確実に僕は日々生まれ変わっていると心から思います。僕はこれからどんな作品を描いて行きたいのか、描くべきなのか改めて問い直すと。僕はずっと1人で絵を描いていると10代20代前半までは思っていたのですが、きっとそうではなくて色んな人との繋がりやコミュニケーションがあって初めて自分というものが再構築されて作品が出来ていたことに気付かされるんです。普段は自分1人で絵を描いているようで、実はそうではなくて誰かとその場所を共にしたり、鑑賞者さんとのコミュニケーションの中で作品がつくられていたんです。


話は変わりますが、岸田劉生という大正から昭和までに絵を描いてきた画家さんのお話をします。代表作は、麗子像という作品になりますが。岸田劉生は、何でもないような道を描いたり、身近なものを描くという点においては少し僕と似ている超有名な画家さんがいます。



岸田劉生

『麗子像』1922


この絵を一度でもみたことが、ある方も多いのでは無いでしょうか。一般的にこの麗子像が有名な画家さんになりますが、次に紹介するのは何でもないような素朴な道を書いた作品になります。



岸田劉生

『道路と土手と堀(切通之写生)』


この絵は、実際に見た風景とは違うそうで、画面の広範囲に伸びている影が落ちる道路が主題の作品になっています。でも実際には、こんなに道路が盛り上がっていないそうで、それでも岸田劉生が描きたかったのはこの何でもない様な道とそれに沿う様な横の伸び上がるような石垣とそこにそびえる山々の様な大胆な構図に挑戦したかったのだと私は思います。


こう言った岸田劉生が日常を捉えて実際に見えているものと「心に映し出される世界」が違うというのも、僕の絵画にも通じる部分だと思っています。僕の母が今回の私の道の絵を見た時に岸田劉生のこの絵を思い出すと言うので、ちょっと紹介してみました。僕なりの現代の世界を映し出す画家として画面の切り取り方が岸田劉生と似た様な作品があるので、今回は僕の母が推している未だ買える岸田劉生を思わせる作品を紹介させて頂きます。




第一位

青空広がる空と海(豊島)



右にある赤いラインが作品の表情を引き立たせている。

実際の風景は平面の一本道であるが、上り坂の様な大胆でワイドな道の構図で色の魅力を引き立たせている。


第二位

海岸沿いと豊島の海



上記の作品と同じ構図で描かれた作品になる。キャンバスは横からの構図で描かれている。また雄大に広がる瀬戸内海とピンク味がかった空が画面の鮮やかさを引き立たせている。構図が魅力的。



第三位

歩道に影が落ちる風景(国立市)



一昨年新たに引っ越した先での国立市の作品。歩道に影が落ちる風景は岸田劉生の作品を思い出させる。また色使いやその構図が懐かしさを思い出される。みていて飽きない。