LC/MSデータを用いたメタボローム解析、付加イオンの変化に注意が必要 | 日本一タフな質量分析屋のブログ

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日本で唯一、質量分析に関するコンサルタント、髙橋 豊のブログです。エムエス・ソリューションズ株式会社と株式会社プレッパーズの代表取締役を務めます。質量分析に関する事、趣味の事など、日々考えていることや感じたことを綴っています。

LC/MSによる分析代行やデータ解析のご依頼で、メタボローム解析を行うことがあります。LC/MSデータからピーク検出を行い、”含有成分を対応するイオンのm/z 値とその抽出イオンクロマトグラム(EIC)の強度のデータセットに変換”し、多変量解析を行って、試料間の差異に寄与する成分を見つけて必要に応じてそれを同定(未知化合物なら構造推定)します。この”含有成分を対応するイオンのm/z 値とそのEIC強度のデータセットに変換”する工程で、イオンのm/z 値情報を取得する際、そのイオン種は何なのか? 他のイオン種が同一成分から生成していないか? が重要になります。

 

一連の測定が短い期間(例えば同一日)に行われるのであれば特に気にする必要はありませんが、数日に亘って測定するような場合には注意が必要です。特にイオン化法としてESIを用いている場合には!

 

例えば、ノミナル質量300の成分が保持時間5分に溶出したとして、ある日の測定ではその成分はプロトン付加分子(m/z 301)として観測されたとします。一連の測定が数日に亘って行われ、途中で移動相を新しく調製したらプロトン付加分子よりナトリウム付加イオン(m/z 323)が観測されるようになるという事は起こり得ることです。ここで重要になるのは、ピーク検出の際にm/z 301と323を同じ成分としてピーク検出ソフトに認識させる、あるいは目視でそれを分析者自身が認識する、ことです。この作業を行わないと、m/z 301イオンとm/z 323イオンは同じ成分由来のイオンであるにも関わらず、別の成分としてソフトは認識してしまい、量的変化が起こったという結果が得られてしまいます。

 

メタボローム解析_付加イオン

この例では、「m/z 301イオンを生成する成分は後半に測定した試料より前半に測定した試料に多く含まれ、m/z 323イオンを生成する成分は前半に測定した試料より後半に測定した試料に多く含まれる」という結果になってしまいます。

 

異なるイオン種を同一成分として認識させる機能は、ソフトによっては使用者自らが設定する必要があります(自動で行ってくれるソフトもあると思います)。私は、ソフトより自分の目を信じるので、結果は一つ一つ目視で検証しています。

 

 

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