上手なLC/MSには時として装置の工夫が必要 | 日本一タフな質量分析屋のブログ

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日本で唯一、質量分析に関するコンサルタント、髙橋 豊のブログです。エムエス・ソリューションズ株式会社と株式会社プレッパーズの代表取締役を務めます。質量分析に関する事、趣味の事など、日々考えていることや感じたことを綴っています。

LC/MSに関する共同研究と技術指導のために月1回程の頻度で訪問している企業様では、装置の改造や工夫を色々としています。

 

先ずはHPLC。試料の性質上APCI(大気圧化学イオン化)を使っていますが、通常の条件と異なり、移動相はミクロ流量が良いことが分かりました。この最適条件を見つけるのに、結構苦労しました。

 

APCIでは、移動相溶媒が反応ガスの役割を果たします。水やメタノールなどの移動相溶媒がコロナ放電のエネルギーでイオン化し、溶媒イオン(正イオン検出でメタノール移動相の場合主としてCH3OH2+)と試料分子(M)が衝突してプロトン(H+)が移動し、MH+が生成します。移動相溶媒が試料分子のイオン化に関与するため、移動相溶媒が試料に対して過剰に存在している方が有利です。APCIで内径4.6 mmの所謂分析カラム(移動相流量1 mL/min)が主として用いられるのは、そのためです。

 

しかし、この企業様では、私が関わる前からAPCIを一般的な条件で使っていて、既知試料分子から生成するイオンの帰属が出来ないと言う問題を抱えていました。

私が共同研究で分析条件を検討するなかで、移動相流量が多い時、特にプロトン供与性が高い溶媒比率が多い時、そのような帰属出来ないイオンが観測されやすいことが分かりました。

 

色々と検討した結果、ミクロ流量にすることで、帰属可能なイオンが安定して生成されるようになりました。

 

しかし、使っているHPLCはミクロ流量対応ではないので、プレカラムスプリット方式のミクロLCを自作しました。前職での経験が大いに役立ちました。

 

先日、訪問して担当の方と一緒に実験をしている時、このLC-MSを販売した代理店の営業の方が来られて、

 

¨高橋さんに手伝って貰うようになって、この装置が上手く動き始めました。それまでは思うように結果が出なかったので。ありがとうございます。¨

 

と、客先での仕事に対して代理店の方からお礼言われちゃいました(^_^)v

 

売った装置で結果が出なければ、装置のせいでなくても、営業としても心苦しいでしょうからね。また、こう言うことを言ってくれる代理店の営業マンとは、ずっと付き合いたいと思います🎵

 

確かに、ここでの現在の結果は、私が手伝わなければ一生出なかったと思います。いまって装置が良いから、メーカーの人でも¨装置を工夫して何とかする¨って事はありませんから。

 

前職でLC/MSの応用研究の部署にいた時(入社して10年間位)は、装置が今みたいに良くなかったこともあり、自分で装置を色々といじったもんです。客先でもやりました。

 

メーカーにいれば自社の装置でしかこう言ったことは出来ませんが、今の仕事なら、お客様の同意のもとであれば、どこの装置でも出来るので、やっぱり現場で手を動かす仕事ってやっていて楽しいです。

 

 

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引用元:上手なLC/MSには時として装置の工夫が必要