この¨可能性がある¨ってところがミソなのですが、それは別の機会に解説します。
今回は①の¨イオンのm/z 値を正確に測れるとどんな良いことがあるのか¨について解説します。
結論から言うと、そのイオンの元の分子の元素組成を推測する(状況に依っては決定する)ことができます。
分子を構成する各元素の原子質量は、例えば水素(1H)は1.0078…、炭素(12C)は12.0000…、
酸素(16O)は15.9949…と言うように、精密質量がきっちり決まっています。従って、既知分子であれば、その精密質量は一義的に決まる訳です。
例えばエタノールの元素組成はC2H6Oですから、モノアイソトピック質量*は、小数点以下4桁では、46.0417となります。
*)モノアイソトピック質量とは、分子を構成する各元素について、天然存在比が最も大きな同位体の質量を用いて計算した分子の質量のこと。
正のエレクトロスプレーイオン化(ESI+)を用いたLC/MSでエタノールを測定すると、分子にプロトン(H+)が付加したイオンが生成するので、モノアイソトピックピークの理論的なm/z 値は47.0491となります。
高分解能のLC-MSで未知試料を測定し、ある成分由来のイオンが47.0491に近いm/z 値のイオンが観測されれば、その値から元素組成を逆算し、そのイオンはエタノールのプロトン付加イオンと同じ元素組成をもつと推測できます。
ここで、イオンの元素組成から元の分子の元素組成を知るためには、重要なことがあります。それは、イオンの種類を判断することです。
例えば、ESI+では、前述したプロトン付加の他に、ナトリウムイオン付加、アンモニウムイオン付加、などによってイオンが生成する場合があります。
イオンの元素組成が解っても、(付加)イオンの種類が判らなければ元の分子の元素組成は分からないので、付加イオンの判別は非常に重要です。それをサポートしてくれるソフトもありますが、やっぱり自分で判断できるようにしたいですね。
ESIで生成し易いイオン種については、以下をご参照ください。
ESIで生成し易いイオン種
高分解能のLC-MSを使ってイオンのm/z 値を小数点以下3~4桁レベルまで正確に測れて、イオン種を判別できれば分子の元素組成が解る。
このことは、未知試料を測定する上で非常に重要です。世の中には数多くの分析装置がありますが、複雑な混合物から成る未知試料に対して、微量でここまでの(まだここでは解説していませんが実際にはこれ以上の)分析をするには、LC-MSやGC-MSが最も適していると言えるでしょう。
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引用元:高分解能LC-MSによる精密質量測定と付加イオンの判別