http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120305/229462/
一橋大学の小黒一正先生の論説です。
この方は増税派ですので、あまり好きではありません。
しかし、現状認識では共通するところもありますので引用させていただきました。
論旨は世代間不公平があり、将来自分たちの社会保障原資が少なくなると予想できればそれを先取りして消費を減らし貯蓄することによって現在の成長阻害要因になるのではないか?ということです。
そしてデータでも実際、40代の貯蓄率が増えています。
社会保障の持続性に疑問を持たない人っているんでしょうか?
全然問題ない、今の年寄りと同程度に年金も医療も介護も給付してもらえる、と信じている方がいらっしゃればそれはそれでいいと思います。しかし、今の水準の社会保障制度を続けることはほぼ無理です。人口構成が違います。
試算では今の70台と今生まれてくる赤ん坊の給付格差は一人当たり1億円以上です。
どう考えても持続的じゃない。
それを僕ら40代以下の人間は確実に意識しています。
住宅ローンを組んだり教育ローンや車のローンを組むより貯蓄するインセンティブが働いても何の不思議もない。
ですから、社会保障制度の制度変更は是非やらなければいけない、ことには同意します。
政府は声なき声を無視するのではなく、是非取り込んでいただきたい。
しかし、いかんせん人口のボリュームが違います。
今の高齢層は投票率も高く声も大きい。
この層を敵に回しては選挙が戦えないことも事実でしょう。
だから未来への投資、公共事業や教育投資なんかよりも年金や医療や社会保障の温存なんですね。
そして声なき声を無視して増税とか、言っちゃうわけなんです。
「強きを助け弱きを徹底的にやっつける政治」
こういう政治が信認される世の中なんですよね。全く狂ってるとしか言いようがない。
ですが、仮に社会保障システムが改善され持続可能な社会保障システムが小黒先生の主張通り通ったとしましょう。
少しは改善するでしょうが、結局、景気回復には至らないと思います。
なぜなら不況の本質はデフレだからです。
デフレで消費を増やす、デフレで設備投資が増えるわけないんです。
どんなに社会保障が持続的なシステムになろうとも現役世代の所得が減り続ければやはり社会保障システムは持続的になりません。
世代間不公平の解消には①経済成長②インフレ率③人口動態の変化が必要です。
③は短期間で改善できません。
①②でカバーするしかないんです。
ロゴフ仮説通り、政府債務の大きな国は市場機能が停滞していますから生産性が上がらない、よって経済成長が低くなるというのはその通りでしょう。
だからと言って現役世代の過剰貯蓄は国債を発行することでしか、市場に流す術はないわけです。
こんな悪循環を早急に断ち切り、インフレを起こすことで民間の消費が増え民間の設備投資が増え成長に資する経済に一刻も早く戻さなければなりません。
世代間不公平は制度の変更が必要であることは勿論ですが、今の現役世代の所得を上げなければ話しが始まりません。
政治家は制度変更も放棄、好景気を演出することもしない。
二重の意味で現役世代を貧困に陥れ、この国の将来を潰しているんです。
そういう認識を持つべきだと思います。