昨今の議論を観てて思うのは一般物価と相対価格を混同していることですね。
これは大きく違います。
このブログでも何度も取り上げさせていただきましたが・・・。
一般物価っていうのは国民が使ったおカネの総量に依存するんですね。
例えば、所得50万円の家計が税金や保険料を10万円引かれたとしましょう。
可処分所得は40万円です。そして貯蓄を10万円しました。
30万円消費に回せるわけですね。
その予算制約で最大の効用(満足)を得ようと考えるわけです。
例えば公務員給与を下げて5万円減税されました。
可処分所得は35万円になりました。
基本的に可処分所得の上昇っていうのは消費を増やす要因なんです。
しかし、5万円すべて貯蓄に回ったとしましょう。
使うおカネの量は変化しないのでインフレにもデフレにもなりません。
次にTPPに参加して食費や輸入品が安くなりました。
30万円使って得られた同等の満足感が25万円でも大丈夫になりました。
浮いた5万円をすべて貯蓄して25万円しか使わなくなればデフレになりますね。
公務員の給与削減反対!TPP反対!って叫ぶ人は国民が上記のような行動を採ると考えてるんです。
でも少し考えればわかりますが、このふたつはどちらも国民にとっては望ましい現象ではないでしょうか?
僕は国民をバカにした議論だと思いますよ。
可処分所得が実際に増えたり、個別の物価が下がって所得に余裕ができているのに国民は効用をさらに満足させる行動を採用しないと言ってるのに等しいわけなんですね。
つまり日本国民がすでに十分満たされていると考えているのと同義です。
これこそ「日本は成長しない理論」そのものではないでしょうか?
おい、ちょっと待てよ。
公務員給与が削減されたりTPPが施行されたら所得自体が下がる人がいるんじゃね―の?って声が聞こえてきそうです。
そうですね、いらっしゃるでしょう。
ですが公務員給与で浮いたお金を子育て支援、インフラ整備、復興に使ったらどうでしょうか?
給与の官民格差は200万円を優に超えています。
すべてとは言いませんが公務員の方たちが所得に余裕があり貯蓄主体になっていることは想像するに難くありません。
一方、借入もできず貯蓄もない、現在の所得の範囲でしか消費をできない方たちも急増しています。
差し引き日本経済にとってどちらが有効な使い道なのかは明白でしょう。
TPPもそうです。
僕は日本人は実質の可処分所得が増えればある程度満足を上げるような行動に出ると思っていますから、デフレにはならないと考えます。基本的に中央銀行のインフレ許容度が変わらなければ上記の例で行くとTPPに加盟しても消費の30万円は変化しないというのがセオリーなんです。もし、30万円より減る兆候が出れば金融緩和すればいいだけです。だとしたら、浮いた5万円は他の消費に振り向けられます。多業種は明らかに恩恵を受け雇用を増やす可能性だってあります。
おカネが偏ることが悪なんです。
現状の財政政策、政府による国民への所得移転が必ずしも消費の旺盛な低所得層に向かっていないことが問題なんですよ。この構造を変えなければいくら国債を刷ってばら撒いてもおカネは退蔵され消費や投資には回りません。
無限に国債を刷れるならそれもいいでしょう。
しかし、国債には利払いが伴います、決して無限なんかではないんです。