「総需要の変動は短期においてのみ生産と雇用に影響を与える。長期においては経済は古典派モデルで記述される生産、雇用、失業の水準に復帰する」
上記は自然率仮説と呼ばれるものである。
デフレ派の人がいくらお札を刷って経済を活性化しても短期的に景気は盛り上がるかもしれないが、結局は元の状態に復すると主張する。
白川総裁も同様の主張をしている。
僕はこの仮説は二重の意味でデフレ派に悪用されていると思う。
まず、現在の状態が自然率であると誤解させている。
自然率というのは完全雇用で国内の設備をフル活動で使用し、現存する技術を存分に使った状態である。
日本はこの状態だろうか?程遠いだろう。
以前NAIRU(インフレ非加速失業率)というのを説明させていただいたが、おカネを刷ってインフレ予想を作り需要が盛り上がることで国内の生産能力がフル活動し物価が上がってくるわけです。
需要が国内の生産能力を超えればインフレだけが加速してそれ以上産出量は増えなくなる。
そこが自然率のはずです。
少なくともそこまではおカネを刷ってインフレ予想を活性化すべきでありましょう。
そして大事な点は短期のインフレ予想の継続が長期にも影響を与える点です。
例えば常時インフレ予想を政府が形成し供給力をフル活動させ続けている国と日本のようにバカみたいにデフレを守って供給能力を棄損させ続けている国を考えてみましょう。
韓国やイギリスなんかは高めのインフレ率に政府がコミットしておりインフレ予想が絶えません。そう言う国は生産活動はフル回転です。特に韓国は日本より実質賃金の下落が激しいので供給ショックが起こりずらい。企業は不況でも安心して設備投資を拡大し、雇用を増やせるわけです。そういう国の供給能力は日本みたいな長期停滞の国の供給能力の伸びに比べて著しく良好に決まってるんです。韓国は失業率も低く、就業の機会が日本より多いので仕事への慣れや習熟度が日本の若者より旺盛な機会に恵まれているわけです。日本はどうでしょうか?円高で製造業は海外移転が絶えず、デフレで内需企業の収益も上がりません。失業率は実質賃金の下落のおかげで各国に比べ高くありませんが生産能力の棄損は著しいです。設備投資は減り続け貨幣は国債へ向かっています。
景気が回復し供給力の勝負になった場合、どちらの国が有利でしょうか?
短期の需要を活性化する政策って言うのは長期的な供給能力の醸成に不可欠なんです。
これは履歴現象(ヒステレ―シス)という理論です。
白川総裁やデフレ下に増税しようとするバカな政治家がいる限り、日本の生産能力は低下し続けていることを国民はきちんと自覚すべきでしょう。