行動経済学では、賃金に対する満足は名目賃金、ましてや実質賃金で決まるわけではないとする。
満足の実態は相対賃金なのである。
それは過去の自分の年収や親の年収、同業他社の年収との相対賃金だ。
そして決定的なのは、他人との相対賃金である。
景気が良くなれば、不動産や証券関係などから賃金が高くなる。
そして民間企業にも好景気の波及が起き、2-3年後には一般労働者にも恩恵が及ぶ。
しかし、公務員はどうだろう?
不景気の方が明らかに公務員の相対賃金は上がるのである。
そして年金生活者もデフレ不景気の方が暮らしやすいのは確かである。
公務員は相対的に自分の地位が上がったように思える。
溜飲を下げることができる。「学生の頃、必死で努力したんだ。悔しかったら公務員になれ」
年金生活者も若者の苦しむ姿を見て、「俺たちの若いころはお前らとは必死さが違うんだよ」
実際に、こういう声はネットでは多く聞かれる。
本音だろう。
国民全員が好景気を望んでいないことは確かである。
しかし、彼らにも意識上ではそんなことはない、と思っているかもしれない。
しかし、無意識に、そういうい気持ちが起こっても全く不思議ではない。
何を隠そう、この僕も好景気でも何の恩恵もない。
デフレ不況の方が住み心地がいい。
好景気で貧困者に職が与えられても何の良いこともない。
夜の街が騒がしくなり、世の中浮かれたようになるのはバブル期に経験しているが、不動産関係の金ぴかおじさんが夜の街を闊歩するのは気分は良くはない。
景気を主導するのは政府や日銀官僚である。
彼らにとっては好景気はあまり住み心地が良いものではないことは確かであろう。