以前にも貯蓄投資バランスのお話しをさせていただいたと思いますが、今回改めて・・・。
三橋ブログで以下の恒等式が出ていました。
経常収支=貯蓄―投資
この論拠は国内の貯蓄が過多であり、国内投資が少ないので経常収支が黒字である。
よって政府支出を増やし景気を浮揚せよ、という三橋氏の主張であると思われます。
国内の計画貯蓄が過多であれば金利は上がらず、クラウディングアウトも起こらない。
同時に民間の資金需要がないから、こういう状態であるとも説明しております。
そうです、事実であり日本政府の資金調達が苦しくなるとはとても考えられません。
しかし、敢えてなぜ、こういう状態が続いているのかと問いたい。
所得収支の黒字による安定的な経常黒字は通貨高を招きます。
通貨高はデフレ圧力です。
であれば、国内景気はいつも不況です。国民全体の所得は上がりません。
事実、現在の国民所得は1991年と同じレベルです、名目成長してません。
こういう状態って国民全体の厚生は上がるんでしょうか?
確かに一部大企業や資産家など、持てる層はいいでしょう。
しかし、デフレで実質金利が上がれば企業は設備投資より貯蓄を優先します。
国民も消費や投資より貯蓄を最優先するでしょう。
よって国債は確かに低金利で調達できます。
しかし、こういう貨幣が動かない社会ではフローの所得は増えません。
泣きを見るのは非正規雇用者や新規雇用者です。
こういう層の雇用は増えず、給与は上がらず貧困にあえぐことになります。
格差は拡大するでしょう。世代間格差も当然大きくなります。
こういう社会は閉塞感がみなぎります。若者は希望を持てません。弱い者は強くなるチャンスもない。
国債の発行はデフレ解消にはなりません、通貨高も招きます、安定的で持続的な消費も生まれないし、実質金利の低下も起こしません。財政政策だけでは根本的な解決にはならないのです。
持続的な消費を起こし、実質金利を下げるのは金融政策です。通貨安にしてくれるのも金融政策なんです。
変動相場制では財政政策より金融政策の方が効果がある。
国債を低金利で発行できるから国債発行を、ではなく、ある程度名目金利があがる状態じゃないと消費は膨らまないし、実質金利低下による民間の設備投資も増えません。通貨安による外需の取り込みも進みません。
貯蓄が過多で投資が過少である現状を変えなければならないのです。
それには実質金利の低下が必要です。
実質金利が高いので貨幣は消費や投資ではなく貯蓄へ流れるんです。
実質金利=名目金利ー期待インフレ率です。
名目金利が多少上がろうと期待インフレ率がそれ以上に上がれば実質金利は下がります。
「貯蓄から投資へ」はスローガンではなく、金融政策で達成されるものなんです。
通貨供給を増やすことが喫緊の課題です。