経済成長するとは、所得の範囲内でモノやサービスを購入できる能力が年々増加することです。
実質経済成長という言葉でも置き換えられますが、中身はそういうことです。
想定される場合は二通りあると思います。
①物価の上昇率以上に我々の給与の上昇率が増加すること。
②物価の下落率以上に我々の給与の下落率が減少しないこと。
この想定は異論がないと思います。
企業はある価格でモノを売って売り上げを得ます。
その価格の中に、設備のリース料、工場建設のためのローン、株主への配当、原材料の支払い、そして従業員の賃金が含まれているわけです。製造業では賃金への支払いが約60%,サービス業に至っては約80%が賃金の支払いに回ってしまいます。一番の負担です、企業にとっては。だから、円高では生産基盤が海外に逃げるんです。日本人の実質賃金が円高で上がってしまいますから。それはまた別の話しですが・・・。
政府が3%のインフレターゲットにコミットしたとします。価格をP 売り上げ数量をV とすれば来季の売り上げは売上数量が変化なければ1.03PV円です。売り上げは当たり前ですが、インフレ率3%分しか伸びてませんから給与も3%しか伸びません。これでは、3%のインフレでも賃金上昇率が3%では我々は豊かになってません。
結局は取り引き数量、いかに多くの財やサービスが取り引きされたかに依存します。
そして、如何により付加価値の高い財やサービスが消費されたかが勝負です。
ここで考えていただきたい。
消費の動機とはなんでしょう?生活必需品は別にして、それ以外の消費の増加は所得が継続的に上がることが予想され、価格が継続的に上がることが予想されるから起こる。すこし難しく言いかえれば、
消費は可処分所得が上がれば増え、実質利子率が上がれば減る。(貯蓄したほうが得だから)
資産効果も無視できない。インフレで保有株式や不動産の価格が上がれば消費が増えることは現代でも観測されている。
我々の所得は人々の消費や投資や純輸出が増えれば上がるのである。そしてそれを継続的にするというコミットメントが政府にあれば、所得の一定の伸びが予想され消費が増える、そしてまた所得が上がる。好循環ができる。
何を言いたいのかというと、インフレで価格が上がるだけならインフレ分しか我々の給与は増えず、実質的に豊かになれない。しかし、インフレ予想のもとでの消費数量の増加とより高付加価値商品へのシフトが我々の実質所得を上げるのである。そしてもうひとつ条件がある。生産性の上昇である。
売り上げ数量が2%上昇しても、従業員が2%増えれば我々の実質所得は増えない。労働者一人当たりの生産性が上がらなければ実質所得は増えないのだ。その生産性の上昇には今の余剰人員と遊休設備を使用すれば十分に対処できるのであれば我々の実質給与は増える。じつはこれがGDPギャップである。
もう一度、強調すると価格が上がるから我々は豊かになれるわけではなく、価格の上昇予想を通して消費量が増えるので我々の実質所得は上がるわけです。そして生産性の上昇を通しても我々の実質所得は上がっていくのです。
長文になってしまいました。
大事な論点ですので、また別の観点から考察してみたいです。
②は後日検討させていただきます。