精神疾患治療法、スポーツの成績向上に応用…桐生第一高校 | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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 精神疾患の治療法として注目される認知行動療法を、スポーツの成績向上に生かす試みが始まった。選手たちの心理的負担や過剰な不安を軽減し、持てる力を十分に発揮できるようにする。先駆的に導入し、成果をあげる桐生第一高校(群馬県桐生市)の取り組みを紹介する。(佐藤光展)

■不安症などに効果

 認知行動療法は、過剰なストレスを招く考え方のクセに気付き、視野を広げて多様な見方ができるようにする方法。嫌なことがあった時、その状況や自然に頭に浮かんだ考えの根拠、別の見方などを所定の様式に沿って順に書き出す「コラム法」(認知再構成法)や、直面した問題を解決するための考え方などを習得する。うつ病や不安症などで治療効果が示され、近年、国内でも普及してきた。

 同療法には、日常的に生じる気分の落ち込みや不安を軽減する効果もあるため、簡略化した方法を健康な人にも行う動きがある。この利点をスポーツの分野でも生かそうと、いち早く動いたのが、1999年の夏の甲子園で野球部が優勝した桐生第一高校だった。

 一時は低迷した時期もあった野球部などの実力アップを目指し、同校の校医で精神科医の関崎亮さんが導入を計画。養護教諭の高野千枝子さんらが、東京で認知行動療法の講習を受けるなどして基本的な技術を学び、導入に備えた。

■「強気に押せた」

 まずは2014年に、進学スポーツコースの1年生のうち40人に試験的に実施した。授業のうち3時間を使い、高野さんらがグループワークなどを交えて、コラム法などを解説した。更に、簡易版の同療法を体験できるサイト「こころのスキルアップ・トレーニング」と連携し、スマートフォンで日々の悩みなどを書き込める同校の専用ページを開設。生徒たちは家庭などでコラム法に取り組んだ。

 1か月後、同療法に取り組んだ生徒のストレス度を自己記入式のチェックリストで確認すると、実施前よりも顕著に下がっていた。一方、取り組まなかった同コースの1年生はストレス度が上昇していた。関崎さんは「思春期はストレスが増える時期。それが驚くほど下がり、効果の大きさを実感した」と話す。

 同療法を体験した生徒たちが中心メンバーとなった野球部は、16年春に甲子園出場を果たし、以後のチームも県内有数の実力を維持。現在3年生の投手は「試合中に不安で崩れそうになった時、考え方を切り替えて強気で押せるようになった」と言う。その結果、四球を連発して崩れることがなくなり、安定感が増した。

 野球部長の桑原(くわばら)孝規さんは「試合に出る機会が少なく、悩んでいたキャプテンが、コラム法に取り組んで自分の役割に気付き、チームのまとまりがすごく良くなったこともある。監督に怒られても力に変えられる生徒が増えた」と話す。

 同校では現在、進学スポーツコースの生徒全員に認知行動療法を指導し、定期的な講習を続けている。

 認知行動療法の第一人者で精神科医の大野裕さんは「現実に冷静に目を向けることで実力が発揮できる。たとえ勝てなくても、多感な時期に視野を広げる方法を学ぶことは今後の人生に役立つ。多くの学校で取り入れてほしい」と話す。