糖尿病でもケーキの楽しみ 「無糖」ケーキ、医院と洋菓子店が開発 | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)と関連が深い糖尿病とその予備軍。食事療法が始まると、つらいのは好物の甘い菓子類を控えることだという。そこで、制限するより、食の楽しみを重視しようと、糖尿病患者の食事指導を行う管理栄養士と洋菓子店が連携。砂糖ゼロで低カロリーのロールケーキを開発し、その成果が学会で発表された。味や食感を通常商品のレベルにすることに成功しており、患者らには朗報だ。(山本雅人)

 ◆味・食感、ほぼ同じ

 開発したのは、にしかげ内科クリニック(神戸市垂水区、西影裕文院長)の管理栄養士、向山万為子さんのグループ。日頃の栄養指導で、患者が甘い菓子類を我慢できないとの声が多いため、そういう人たちでも食べられるスイーツを作りたいと無糖のケーキのレシピ作りを思い立った。

 複数の洋菓子店に声を掛け、神戸市内に本店を置く「パティスリー・ブルシェ」(吉田英三代表)が「ぜひ一緒にやりたい」と協力を申し出た。

 開発に当たっては砂糖に代わるものとして、「泡立ちなど卵に配合した際の相性が一番良かった」パルスイートという甘味料を選び、ケーキの生地に巻き込む生クリームは低脂肪の生乳を使用した。

 低カロリーでも普通のスイーツと同じような満足感を得られるようにするため、「生地やクリームに入れる甘味料の量を1グラム単位で調整し、試作を繰り返した」(向山さん)。

 構想から1年後、商品が完成。カロリーは厚さ約2・5センチの輪切りのサイズで121キロカロリーと、砂糖を使った場合のロールケーキに比べ、約40%のカロリーオフを実現した。小麦粉を使い、米粉やふすま粉は使わなかった商品は画期的で、これにより、食感や味が通常商品とほぼ変わらないものに仕上がった。

 患者やその家族向けの試食会も実施。170人のうち9割が「おいしく、ちょうどよい甘さ」という回答だった。今年から同店の商品に加わった。もちろん砂糖はゼロだから、血糖値の急激な上昇などの心配も少なく、「糖尿病患者やメタボの人、ダイエット中の人にも好評で、遠方の人には通信販売で応じている」(同店)という。

 ◆学会でも注目

 このケーキは、糖尿病患者と多く接し、その心情を熟知する専門医の西影院長の思いも反映されている。同クリニックが糖尿病患者にアンケート(53人回答)を行ったところ、7割以上が週に数回以上、甘い菓子類を食べてしまい、「ほぼ毎日」という人も17%いた。

 向山さんらの成果は5月の日本糖尿病学会年次学術集会で発表され、単なる菓子にとどまらず、食事療法の新たな方法として注目を集めた。向山さんは「味と低カロリーなどを重視した商品が増えれば、患者さんが生活の質(QOL)を下げずに、食事療法を続けられる」と話している。

 ■難しい食事療法継続

 日本人の糖尿病患者とその予備軍の合計は2050万人(平成24年国民健康・栄養調査)。治療の基本となるのが食事療法と運動療法で、食事療法は適正なカロリーと栄養バランスで血糖値上昇を抑え、症状悪化と合併症を防ぐ。

 だが、頭で理解できても実行は難しく、糖尿病研究・治療の権威で国立国際医療研究センター総長の春日雅人氏によると、糖尿病外来での診察経験から「指示された食事療法を1年間継続できる人は1割以下で、食事に少し気をつける、といった程度のことでも半数から7割くらいの継続率」という。