日の丸医療で欧米追走 「インフラ」「病院丸ごと」輸出で新戦略 | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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 政府が成長戦略の一環として進める「パッケージ型インフラ輸出」の底上げを図るため、鉄道や発電所といった実績のある事業だけでなく、医療や防災などサービスを含んだ将来の成長分野の輸出を強化する動きが出てきた。とりわけ、医療分野は、京大の山中伸弥教授のノーベル医学・生理学賞受賞に代表されるように、日本の研究レベルや技術水準の高さは世界も一目置いている。アジアや中東などの新興国での医療ビジネス拡大を視野に、欧米や韓国の成功例を手本にした日本版「病院丸ごと輸出」で追走する。

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 ◆中東などで実証計画

 「イラクの医療市場はすべての国に開かれている。保健・医療分野の発展に、日本にも協力していただきたい」。9月25日、イラクの首都バグダッド。アルサッド保健省副大臣は、医療機器・サービス輸出の日本の官民合同派遣団に対し、強い期待感を表明した。

 派遣団には東芝メディカルシステムズ、日揮など民間企業5社が参加。イラク国内では、現在45病院が建設中といい、イラク保健省側は、その病院建設の入札スケジュールや必要とされる医療機材を説明。これに対し、日本側は各社が扱う医療機材などを紹介した。

 派遣団を率いた経済産業省は「イラクは戦争で国土が疲弊し、医療インフラの整備が遅れている。医療機材だけでなく、人材育成や保守・点検などサービスも一体として輸出していきたい」(ヘルスケア産業課)と力を込める。経産省は今年度、中東など10カ国で同様の実証プロジェクトを展開する。来年度も約20億円を概算要求し、医療分野の輸出拡大を牽引(けんいん)する。

 経産省によると、世界の医療市場は2001~10年まで年平均8.7%で成長し、医療機器、薬品、診療サービスを合計した市場規模は約520兆円に上る。

 その中で、本体に内蔵した光学系で人体内部を観察する「軟性内視鏡」でオリンパスや富士フイルム、HOYAなど日本勢のシェアを積み上げると、ほぼ100%に達する。また、超音波診断装置でも、東芝など日本勢が高い画像処理技術を生かして計2割程度のシェアを握る。

 ◆日本の強み結集

 しかし、いくら日本勢が個々の医療機材で高い技術力を見せつけても、医療インフラでは欧米や韓国の後塵(こうじん)を拝しているのが現状だ。これらの国々は、地元と協力し、医療機関そのものを海外輸出する「病院丸ごと輸出」の戦略を展開し、医療機器の輸出促進やブランド力向上につなげているからだ。

 例えば、独シーメンスは10年10月、アブダビ首長国に医療センターを設置し、がん、心臓病、神経系疾患の早期発見や治療を提供する。診療部門は、米国メリーランド州のジョンズホプキンス大学病院が運営。シーメンスは施設で使用する診断用医療機器を導入した。

 また、韓国も電子カルテなどを得意とするサムスングループが調整役となり、ドバイ福祉省と医療人材の相互交流の覚書を締結するなど、各国が機器・サービス一体として売り込み攻勢をかけている。

 「病院丸ごと輸出」を積極展開している国との格差は急速に広まる。ドイツや韓国が、インドなど新興国市場への輸出額を伸ばしているのに対し、日本企業は思うように伸ばせない。

 日本政府は「パッケージ型インフラ輸出」の新たな主要分野に「医療」を位置付け、官民一体で、日本の強みを結集した日本版「病院丸ごと輸出」も視野に新戦略を描く。

 ■製品、サービス…アドバンテージの集約カギ

 東レ経営研究所の増田貴司チーフ・エコノミストは「(国を後ろ盾にして貿易を促進する)『新重商主義』の傾向が世界的に強まる中、政府はインフラ全体の構想を描き、国際標準づくりに関与するなど、率先して(戦略づくりに)取り組むべきだ」と、政府のリーダーシップに期待を寄せる。

 「人口動態や病床数などをみると、アジア・新興市場でビジネス機会が増える」と専門家は分析する。とくに、東南アジアや中東、中国などは、日本製や日本人医師に対する信頼が高い。

 こうした個々のアドバンテージをどう「丸ごと輸出」に結びつけるかが課題になる。円高で競争力が低下している中、「コア(中核)ジャパン」の布陣を組み、強い機器・サービスを提供することが重要だ。

 急成長が見込まれる「医療分野」のインフラ輸出で欧米・韓を巻き返せば、日本のインフラ輸出の一段の飛躍を実現する「突破口」になるのは間違いない。(会田聡)