[PTSDの治療法]心の傷、文字にして回復 | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

変なニュース面白いニュース、野球、サイエンス、暇つぶし雑学などなど

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=52844

 心が深く傷ついた出来事を文字にしてつづることで、心的外傷後ストレス障害(PTSD)からの回復をはかる。そんな筆記による心理療法の普及に向けた取り組みが始まっている。(渡辺理雄)

音読も重ね一つ一つ処理

 国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)部長の堀越勝さんは、この心理療法について次のように説明する。

 「PTSDは、襲ってきた出来事が心の容量を超えてしまい、うまく処理できないままでいる状態です。避けて放置しておくだけではよくならないことがあります。何を感じているかを筆記し、つらい出来事と向き合い、適切に受け止めて処理できるようにしていくのが、この心理療法です」

 PTSDには現在、心の傷(トラウマ)となった出来事を思い出し、医師や心理専門職に対して詳しく語る心理療法が主に行われている。語りを通じて、心の傷を癒やす手法だ。筆記による心理療法は比較的新しいが、アメリカの研究では、どちらもほぼ同じ効果が上がっているという。

 「筆記は、どこまで書くか自分で決められるため、苦しい体験を話しにくいという人には治療法の選択肢が広がるといえます」

 堀越さんらは一般向けの解説書「こころを癒すノート」(創元社、1200円=税別)を3月下旬に出版するが、初歩段階の書き進め方を教えてもらった。

 まず、ノートなどを用意し、その出来事によって、自分自身や人間関係、日常生活、人生観、世界観などで、変わったこと、変わらなかったことなどを書きだしていく。自分にとって、その出来事がどのような意味を持つかを考えるためだ。1回で書き終えなくてもいい。落ち着ける場所で、時間や気持ちにゆとりがある時に行う。

 「書いていると、『誰も信じられない』『生きていてもいいことはない』などと思い、うまく筆が進まなくなることもあるかもしれません。筆が滞ったらそこに線を引くなどの印を付けます。そこが割り切れずに引っかかっているところです。筆記の目的の一つは、自分の中でうまく処理できていない点を明らかにすることなのです。途切れ途切れでも、素直に思いを書くことが大切です」

 書き終えた後、ノートを音読する。意味を考え直すとともに、避けたい不快な思いや感情に少しずつ慣れるためだ。

 飛ばし読みをせず、声に出して読めるようになったら、今度はトラウマとなった出来事を詳しく書いてみる。出来事を見つめ直し、起こったことについて現実的に理解し、引っかかっている自分の感情や思いを一つ一つ処理していくことが狙い。書き終えたら音読も行う。

 アメリカなどでは、医師や心理専門職の助けを受けながら、週1回、合計12回のプログラムで行われている。国内でも同じプログラムで行えるように同センターが専門職向けの研修を行う準備を進めている。

 編集作業中の本は、質問に答えながら書き進めていく形式になる予定。書き進めることで、偏った考えにとらわれずにバランスがとれた考え方ができるようになるのを目指す。本の問い合わせは、創元社((電)06・6231・9011)へ。

PTSD
 災害・事故、性的暴力、犯罪など衝撃的な出来事に遭った後、その体験が急によみがえる、眠れない、物事に集中できないなどの症状が出る。1か月以上症状が続く場合に診断される。出来事を連想させる物事を避けたり、出来事の一部を忘れたりする症状が表れることもある。

(2012年1月12日 読売新聞)