現代うつ病Q&A 【第3回】バランス良い睡眠、食事を~発症・再発防止のために~ | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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睡眠時間を確保する

 ―前回、うつ病患者の特徴として「生活リズムの乱れ」を挙げられました。今回、この点について詳しくお聞かせください。

 私は毎日、100人以上のうつ病の患者さんを診察していますが、かなり高い割合で生活習慣・生活リズムの乱れが認められます。「睡眠」「食事」「運動」のどれかが不足したり、極端に乱れていたりすると、うつ病の発症リスクが高まりますので、基本的な生活リズムを確立することが何より大事になります。

 ―そのうち睡眠は「リズムが崩れている」とのお話でした。

 そうですね。多くのうつ病の患者さんは睡眠時間をコントロールできず、不眠などの睡眠障害を合併しています。サラリーマンの場合、1人1人の仕事の負荷が増えて帰宅後も時間が圧迫されているようですね。また、若い方々に顕著ですが、インターネットに没頭するあまり、睡眠時間が削られてしまうケースも少なくありません。

 うつ病の場合、不眠症以外の睡眠障害を併発することがあります。具体的には、睡眠時無呼吸症候群(SAS)、むずむず脚症候群(足裏やふくらはぎなどの不快感から、足を動かさずにいられない症状)などですが、中でもSASが多いようです。

 例えば、うつ病で長期的に離職している人の中には、お昼ごろまで寝てしまい、夜に眠れなくなるというケースが見られます。それによって食事が不規則になり、さらに運動ができないと太っていきますが、その結果として、(肥満の人がなりやすい)SASを合併することが多くなります。また、うつ病発症時にすでにSASを合併しているケースも多いという印象を持っています。

 うつ病の治療、そして予防や再発防止のためにも、睡眠時間の確保とリズム確立の重要性をしっかり理解してほしいと思います。

高タンパク食のススメ
 ―食事に関してはどうでしょう。

 基本的に、バランスの良い食事を取ることが非常に大切です。一方で、抗うつ薬を服用することの副作用として、食欲が増すことがあります。過剰なカロリー摂取は肥満につながり、患者さんのストレス要因になると思いますので、注意が必要です。

 ―どのような食事を勧めますか。

 高タンパク質・低糖質食ですね。その理由は、脳内ホルモンを作るにしても、神経を形成するにしても、タンパク質が必要だからです。

 セロトニン(その欠乏がうつ病の原因ではないかともいわれている)という脳内ホルモンは、主として動物性タンパク質から分解されるアミノ酸で生成されています。健康にいいとされる大豆などの植物性タンパク質に偏らず、積極的に動物性タンパク質を取ることも大切です。

 ビタミン不足は疲労・抑うつ気分と深く関連しています。ビタミン類は、すべてのタンパク質の生成に必要です。特に、ビタミンB群は(酵素の働きを助ける)補酵素としての役割を果たしますので、B群の複合体をバランス良く取ることが大事だと思います。残念ながら、今の野菜をはじめとして、現代の食事だけでは十分なビタミンB群を摂取することは困難になってきています。私は必要に応じて、医療用のビタミンサプリメントを処方しています。

 ―具体的に、どんな食事を心掛ければよいでしょうか。

 赤身の肉や魚類は、良質の動物性タンパクを取ることができます。玄米をはじめ、精製されていないお米もいいでしょう。ビタミンが多く含まれていますし、糖の吸収を抑えることができます。野菜もしっかり取り、糖質を控えるなどして、カロリーバランスを考えた食事をしてください。
体重を量ろう ―栄養バランスの乱れは生活習慣病につながりますが、先生は第1回で「糖尿病などの患者はうつ病の合併がしばしば起こる」と指摘されました。

 はっきりした因果関係は分かりませんが、明らかにその傾向があります。

 生活習慣病を合併したうつ病の患者さんは、抗うつ薬を服用するだけではなかなか治りません。心と体は相関関係にありますから、生活習慣病の治療も必要です。私は内科専門医でもありますので、糖尿病や高コレステロール血症などの有無をチェックし、メンタルと一緒に治療するようにしています。

 例えば、私が診た50歳代のうつ病の患者さんは、高血圧でコレステロールが高く、睡眠時無呼吸症候群も合併していました。体重が100キロ以上あったので、うつ病の治療と併せてダイエットするよう指導し、20キロの減量に成功しました。その結果、身体的な症状が改善した上に集中力が上がり、今では元気になって社会復帰しています。

 ―摂取カロリーのコントロールが重要なようですね。

 私は、患者さんには体重を毎日量るよう指導しています。どんな食生活を送り、どれぐらい運動したら体重がどのように増減するかを実感することは、生活リズムを確立する上で大変有効です。

(次回へ続く)