口の機能回復(5)外来リハビリ 失語症改善 | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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 妻が話す言葉も、ラジオの内容も、よく分からない。会話は筆談が増えた。

 「これからずっと筆談しないといけないのかしら」。妻は不安に思った。

 福島県郡山市の男性Cさん(69)が脳梗塞になったのは、2008年10月。手足のまひはなかったが、失語症になった。

 失語症は脳の言語中枢の損傷で生じる。言葉の意味が分からなくなる人もいるが、Cさんは新聞を読むと意味は理解できた。でも、耳から入る言葉の「音」が認識できず、正しく音読することもできなくなった。

 救急入院した市内の病院を11月末で退院し、埼玉県内のリハビリ病院に移った。ある程度は回復したが、09年3月末の退院時、「リハビリは終わり」と告げられた。外来でのリハビリも行わないという。

 郡山市の総合南東北病院の言語聴覚士で、日本言語聴覚士協会理事でもある佐藤睦子さんによると、脳血管障害のリハビリは医療保険では原則、発症から半年以内とされている。

 発症半年を超えても、医師が必要性を認めれば保険でリハビリを受けられるが、これ以上回復は望めないと考え、退院後の外来リハビリを行わない病院は多い。

 Cさんも半年ほどリハビリを受けられなかったが、心配した娘が、外来でのリハビリも行う総合南東北病院を見つけた。09年11月から週1回、ここで40分のリハビリを受けている。

 「サル」「マッチ」「カタツ……カタツムリ?」

 今年7月のある日。同病院の一室で言語聴覚士の赤坂理恵子さんがカードを見せるたび、Cさんは描かれた絵の名前を言っては、紙に字を書いていく。脳で認識した概念を言葉にし、正確に発音する練習だ。

 次に、目でとらえた言葉を正確に発音するため、書いた字を読み上げてもらう。「けいさつ」を「せいかつ」、「じゃぐち」を「じょぐち」と言い間違えたが、後は正しく発音できた。

 赤坂さんは「当初は40分でカード50枚が精いっぱいだったが、今は100枚こなせる。間違いも自分で修正でき、会話でも言葉が出やすくなった」という。

 Cさんは自宅でも、ラジオをつけっ放しにして言葉を聞くなど努力している。妻との会話は、筆談が要らなくなるまでに回復した。

 佐藤さんは「脳の損傷は簡単には治らないが、いい刺激を与えれば失語症も年単位で改善する。介護施設や在宅でも十分なリハビリが受けられるよう、今は2万人弱と少ない言語聴覚士の数を増やし、リハビリの質も充実させていく必要がある」と話す。

(2011年8月26日 読売新聞)