口の機能回復(4)空気漏らさず発音改善 | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

変なニュース面白いニュース、野球、サイエンス、暇つぶし雑学などなど

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=45958

 東京都世田谷区の女子大生Aさん(19)は以前、話すことが嫌で仕方なかった。

 鼻にかかった声で、たとえば「バビブベボ」と言おうとしても、どうしても「マミムメモ」になってしまう。何か話すと何度も聞き返された。授業中に教科書を読んだ時、「はっきりしゃべるように」と教師に注意されたこともある。

 発音を直したいと、高校2年の3月、昭和大学歯科病院(東京都大田区)の口腔(こうくう)リハビリテーション科を受診した。

 バ行の音は、口に封じ込めた空気を破裂させて出す。口は鼻の奥に通じているため、空気を封じ込める時、上あごの奥の軟らかい部分「軟口蓋(なんこうがい)」がせり上がり、鼻への通路を塞ぐ。

 ところがAさんの場合、軟口蓋がよく動かず、息が鼻の方に漏れてしまう。これが、「バ」が「マ」になる原因だった。

 別の病院での詳しい検査の結果、首の骨の先天的な変形によって神経が圧迫され、軟口蓋がよく上がらないことが分かった。

 
 そこで同科が作ったのが、「スピーチエイド」と呼ばれる発音補助装置。上あごにはめるプレートと、やや小さな栓が、針金でつながっている。栓の大きさや位置を調整して、栓の方を口の奥に入れることで、口と鼻の通り道を塞ぐことができる。

 スピーチエイドの調整を終えると、Aさんはバ行の音もはっきり言えるようになった。「今は、これがないと人前に出られない。違和感もないし、積極的にしゃべれるようになった」

 スピーチエイドは、先天的に唇やあごが裂けている口唇(こうしん)口蓋裂(こうがいれつ)患者の発音障害の治療にも使われる。

 横浜市の会社員女性Bさん(58)は、幼少時に口唇口蓋裂の手術を受け、外見上は分からなくなった。しかし、軟口蓋の長さや動きが不十分で、発音障害が残った。

 大学生の時にスピーチエイドの存在を知り、同市内の大学病院で作った。以来、スピーチエイドは生活に欠かせない道具になった。

 「命の次に大事なもの。これが壊れたら電話もできず、仕事もできない。死活問題です」と話す。

 しかし、スピーチエイドを作ってくれる病院は少ない。Bさんは最初の担当歯科医が病院を去った後、別の病院をインターネットで必死に探し、昭和大歯科病院にたどり着いたという。

 同科教授の高橋浩二さんは「大学病院でも、スピーチエイドの豊富な経験を持つ歯学部は少ない。鼻呼吸を妨げずに発音を直すには、コツと経験が必要なのです」と話す。

(2011年8月25日 読売新聞)