医師の首絞め看護師殴る…患者の院内暴力深刻 | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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より

 茨城県内の医療機関で、患者から身体的・精神的暴力、セクハラ(性的暴力)などを受ける院内暴力が深刻な問題となっている。

 職員の離職や医療サービスの低下につながる事態に、自主防衛策に乗り出す病院が増えている。

市民の意見聞く取り組みも
現場の声
 「医者を呼べ、お前らも殴られたいか!」。県内のある病院の夜間救急外来に、酒に酔った男性が来院した。名前を尋ねる女性看護師に「さっさとしろ。チャカ(拳銃)持ってるんだ!」とすごみ、頭をつかんで振り回した。けがはなかったが、この看護師はその後、不眠が2、3日続いた。

 筑波大大学院の三木明子准教授(看護科学専攻)が6月に出版した「看護職が体験する患者からの暴力―事例で読み解く」(日本看護協会出版会)で、全国の院内暴力の実態が明らかにされた。読売新聞の取材では、県内でも「急いでいるから薬だけ欲しい」と診療を拒否したり、「治療期間が長引いた分だけ生活補償しろ」と無謀な要求をしたりする患者や、女性看護師へのストーカー行為など実例は多岐にわたる=表=。

 院内暴力の背景には患者の権利意識の高まりに加え、プライバシーへの配慮から密室でケアをする病院固有の事情が存在する。三木准教授は「茨城の医療現場は暴力に耐え忍ぶ地域性も見られ、組織での取り組みが十分に進んでいない。医療事故防止対策に比べ、暴力防止対策の優先順位が低い」と指摘する。

助っ人導入
 牛久愛和総合病院(牛久市)では3月、「患者サービス室」を設置した。専任の中村育夫さん(59)は、昨年まで東京都内の病院で同様の部署で働いていた。現場で15分以内に対処できない苦情が発生すると駆け付け、別の診療に影響しないよう別室に移動して話を聞く。看護師からは「仕事に集中できる」と信頼を置かれている。

 処理した事例は、関係する主治医らに必ず報告する。トラブルの再発防止や院内環境の改善に役立てるためだ。中村さんは「患者の要求を見極めて毅然(きぜん)と対応しなければ、理不尽な要求や暴力を振るう患者を生み出す」と、無理な注文には病院の立場を説明する役目も担う。

 土浦協同病院(土浦市)では4月から、県警の元警察官を常駐させている。心理学や護身術などの知識を持ち、法律にも詳しい“助っ人”として活躍している。筑波大付属病院(つくば市)でも3年前から、元警察官を採用。「患者相談窓口」には、患者の情報を正確に把握するため録音・録画装置を設置した。

 牛久愛和総合病院では「地域に開かれた病院を目指し、院内を明るいイメージにしたい」と今月、市民で作る外部評価委員会を設置。理不尽な要求に苦慮する病院の実情を知らせたり、市民の意見を聞いたりする取り組みが始まった。

 三木准教授はこうした病院側の動きについて「一部の患者の無用な暴言・暴力に対し、現場のその場しのぎの対応では解決にならず、組織で対策を立てざるを得ない現状に直面している」と見る。医療の原点である患者と病院の信頼関係構築に向けた模索は続く。(原田この実)

 茨城県内の院内暴力の事例

 ・看護師が殴る、けるの暴行を受け、眼窩(がんか)底骨折で手術、もう1人はあばら骨を折った

 ・つばを吐く、かみつく、ひっかく、暴言を吐くなどの行為を日常的に受けた

 ・作業療法士のリハビリ説明が気に入らず、なだめに入った医師が首を絞められた

 ・朝7時の体操の声かけに行くと、いきなり顔を殴られた。「眠かった」との理由だった

 ・介助のため、もう1人職員を呼びに行くと説明すると「不親切だ。お前なんて簡単に殺せる」と大声を出し、足げりされた

 ・ベッド横でカーテンを閉め、体をふいていると胸を触られた

 ・患者の家族から「体をよくふいていない」、「1番に父の処置をしろ」と召し使いのように扱われた

 (2008年、三木准教授の調査より)

病院の半数被害
 全日本病院協会が2007~08年、全国の会員2248病院を対象に行った「院内暴力など院内リスク管理体制に関する医療機関実態調査」によると、患者やその家族らから職員が院内暴力を経験していた病院は52・1%に上った。1106病院から回答があり、有効回答率は49・2%。

 発生事例のうち、「警察への届け出」は5・8%、「弁護士への相談」は2・1%に過ぎず、多くは院内で対応していた。同協会は「院内暴力の対応に伴う病院負担が大きいことがうかがえる」としている。

 一方、職員の被害状況を院内で把握しようと、報告制度などを整備しているのは38・9%、対策マニュアルや指針を整備しているのは16・2%、院内暴力を回避するための研修を開催しているのは12・7%にとどまった。

(2010年10月22日 読売新聞)