朝起きて、シャワーを浴びる。
熱いシャワーの後に水を浴びて身体を起こす。
いつになく、とても落ち着いている。
今日は特別な日。
そこそこ混みあった電車に揺られ
コンクール会場に到着した。
靴を履き替えて、すぐにリハーサルRoomへ向かう。
うーん、不思議と落ち着いている。
いよいよ自分の出番が近づき裏方へ回る。
直前の人が弾き始めると、アナウンスの女性(超美人)
が話しかけてくれて、地元九州の話題で盛り上がる。
緊張ほぐすため気を使ってくれているのかな・・・
「あれ、弾き終わっちゃった」と慌てた様子。
おいおい、大丈夫かいな~
いよいよ僕の出番。
椅子の高さ、バッチシ。
譜面台に自分の顔が映る。気になるが、まぁいっか。
「君はどんな音を奏でるんだい?宜しくお願いしますね」
とPianoに少し触れて思いを伝える。
落ち着きは続いている。 いける。。。
最初の1フレーズ♪
おぉ、なんと、僕がイメージするノクターンop9-2に
抜群の相性。とっても素敵なホールの響き。。。
そう。先生が言っていた
「Pianoは弾くのじゃない。Pianoからの音をメッセージを
聴き取って、それに返事をするのです」
聴こえてきた。Pianoからのメッセージ。
嬉しい。とても嬉しい。
僕は夢中で弾いた。
終盤に、ミスタッチ! 何故?
まぁ、気にせずそのまま続ける。
「僕は君を愛している」と何度も叫びながら弾いた。
最後のソフトな部分になって、自分の指が、足が、、
小さく震えているのに気がついた。
後から振り返ってみると
今までで一番上手く弾けたと思う。
全部を出し切ったのだ。
しかし、あのミスタッチは理由が見つからない。
いつもは普通に弾けているところ。集中力は最後まで続いた。
これが、魔物。でも僕にとっては小さい魔物だった。
客席に戻って、他の人の演奏を聴く。
みんな幼少期に経験したベテランばかり・・・
音が違う。悔しいけど、これが現実。
でも、でも、
前の席の女性(誰かの応援にきた人?)が
「とってもお上手ですね。素敵な演奏でしたよ。」と
帰り際に、言って下さった。
「お上手」は100%お世辞だと受け取ったが、嬉しかった。
結果なんてどうだっていい!
僕が、僕の演奏が少しでも感動を与えたのだ!
嬉しくて、後から涙が溢れてきた。
我武者羅に頑張ってきて本当に良かった。
しばらく時間が空いたので
渋谷ヒカリエで昼食をとって、すぐに戻った。
いよいよ。審査発表。
でも、僕は異様に落ち着いていた。