詐欺?窃盗?イヤそれとも横領?

 

 いろいろなことが起きるものだ。事件、事故・・など。

 ある会社に事件が起きた。それが判明したのは2年前だった。

 

 会社の資材が無断で使われていたのだ。

 それも取締役(以下 勝山)が会社の車や従業員を使って現場に持っていかせ、会社の外注業者を使い、その工事代金をせしめる行為だった。この事件は前社長(以下遠野社長)の時にはすでに分かっていたことだ。

 

 会社の新社長(以下泉田社長)は正義感の強く、黙っているような人間ではない。ただ、ハッキリとした証拠がない。あるのは状況証拠だけ。

 泉田社長は、私は事件の証拠調べを私に頼んできた。

 

 2年前の2月は会社の別な不祥事もあり、泉田社長は多忙を極めていた。

 まず泉田社長、取締役である勝山を解任させるにはどうしたらよいものか思案していた。

 会社の取締役を解任(辞めさせる)するということは、スゴク大変な事なので、困っていた。

 そこで私が調べることになった。

 調べていくと、出るは出るは私的流用の証拠が。

 私は勝山を社長室に呼び出し、持っている証拠を見せ、問いただした。

 勝山は、その事実をあっさりと認め、謝罪をしたのだ。これには私もビックリした。

 否認するかと思っていたからだ。

 勝山はさっぱりした性格で、あまり裏がない男だ。

 

 「なぜこんなことをしたのか?」

 「お金が欲しかったから。それと前社長の遠野は、あまあまだったのと、しょっちゅうゴルフに行っていたので、バレないと思っていた」

 「なぜお金が欲しかったのか?それなりの給料をもらっていたはず」

 「俺は、子供の大学進学資金欲しさと、またお金があればあっただけ使っちゃうほうなので、手元に残るのはいつも少なかった」

 「本来、懲戒解雇だけど、世間体や家族のこともあるので、自ら辞任するということでどうだ」

 「分かりました」

 辞任届にサインをさせ、次の日から会社には来なくなった。

 ただこれだけで終わるわけではなかった。

 ある一部だけの証拠を見せ、認めさせたのだが、その後、資材の総額がなんと700万を超えていることが判明したのだ。

 また退職後、なにかと会社に迷惑をかけていることが分かり、今年になって徹底的にやってやろうと泉田社長は決断をした。

 

 昨年の11月1日、私がまずKH警察に手元にある証拠を持参し、被害届を出すためには持参した証拠書類で不足はないかを相談し に行った。行った先は、刑事二課 知能犯係。

 担当刑事は、「もう少しはっきりとした証拠が欲しい。可能であれば元請の証言か、注文書があるとなおいい」と言われ、持ち帰る。

 それから泉田社長の動きは早かった。

 元請のJ会社に、可能な限りの証拠書類(発注書)を送ってもらうようお願いした。

 一週間後にその資料が届き、精査して、それらを証拠書類としてKH警察に行った。

 この証拠で問題ない、また調査を開始できると回答を得る。

 罪名「業務上横領」となった。

 

 だがそれからがなかなか進まない。

 今年に入ってKH警察に行き何度か話を聞いてもらったが、調査の進捗状況が非常に遅い。業を煮やして催促を何度かするが「いま調査中!」で片づけられて早、7か月が経ってしまった。

 

 5月末に、担当刑事から電話があり時効が近くなりこの時点で受理することは難しいとの返事だった。

 犯罪と分かっていて逮捕案件なのにできない。警察の事情(忙しすぎる)で時効が迫る結果となってしまった。

 警察の対応に対して不満しかないが、今更どうにもならない。

 

 警察が調査している間、勝山の胸中は「ハラハラドキドキ」だったに違いない。

 それで良しとするしかないかなぁ~。

 でも諦めきれない。

 勝山は、前に勤めていた会社でも同様の行為をして首になっていたことが分かった。

 

 本当に懲りないやつっているんだなぁ~

 *ここに出てくる人物はぜんぶ架空の人物です。現在、故人を問わず、実存の人物と類似する点があっても、それは全くの偶然にすぎません。 

 スミマセン。