もう何年になるかなぁ~。唎酒師の資格を取ってからすぐだったので20年は昔の話になるな。
当時、私の会社はアメリカの塗料会社から日本向け製造の塗料を輸入していた。
打合せの為、アメリカに行っていた時の話です。
その会社の社長宅に、ディナーに呼ばれ社長家族と一緒に食事をしていました。
ピネダ社長は、ワイン棚から日本酒を持ってきて私に見せました。
「Mr.ワタナベ、このお酒、高かったんだけどいいお酒なんですか?」と聞いてきました。
私がそのお酒を見ると「久保田・萬壽」ではありませんか。
「いつ買ったんですか?」
「そう、2年くらい前だったかな。Mr.ワタナベが来たので、思い出したんだ」
「このお酒は日本でもランクが一番上になります。いいお酒ですよ。でも残念だけど、賞味期限がとっくに切れていておいしくは飲めないですよ(例外はある)」
「えっ!ダメなの。ワインは、賞味期限はないんだけど」
「日本酒は未開封で1年弱ですね。開封したらできるだけ早く飲むことです」
彼は、非常に残念がっていました。
最も長い普通酒と呼ばれる日本酒の賞味期限は、製造日から約1年を推奨されています。日本酒の目安賞味期限において、普通酒が最も長い理由は「火入れ」という加熱処理を行っているためです。
ちなみにアメリカで日本酒を買うと、日本の約4倍もします。
これにはカラクリがあって高くなってしまうんです(後日詳しく説明)。
アメリカの酒屋はだいたい日本のコンビニくらいの大きさです。
売り場面積の50%ぐらいがワインをおいてあります。
続いてビールが30%くらいです。アメリカのビールは多種多様です。地ビールの多さにビックリします。またラベルが凝ったデザインが多く見ていて飽きません。
肝心の日本酒ですが、置いてあるのは大体一番奥のコーナーです。すべて常温です。
ピネダ社長が「久保田・萬壽」を買った値段は、日本円で約2万円(720ml)ですね。日本だったら5,000円しないでしょう。
日本酒は海外でも人気が高いのですが、人気だけでなく値段も高いので手が届かないのが実情のようです。
ちなみにノーベル賞の晩さん会で出されたお酒、何だったか知っていますか?
神戸酒心館の「福寿 純米吟醸」です。兵庫県産の酒米と六甲山の伏流水を原料としてつくられます。
日本酒の人気はスゴイもので、これからも世界中に広がっていくでしょう。
ちなみに、お酒の賞味期限の説明をします。
●日本酒(普通酒):製造日より1年
●日本酒(吟醸酒・純米酒・生貯蔵酒):製造日より10か月
●日本酒(生酒):製造日より8か月
●ウヰスキー・ブランデー・焼酎・リキュール・シャンパン:特になし
●ヴィンテージワイン:10年
●ビール:製造後9か月
●チューハイ:約1年
と言われています。それと開封後は、できるだけ早く飲むことです。
例外:ブランデー(半年~1年)、リキュール(3ヵ月)、シャンパン(1か月)の間なら問題ないようです。
また、賞味期限がないお酒のウィスキーやブランデーは、瓶に価値があり買取業者に高値で買ってもらうこともできます。
若山牧水は、
「白玉の歯にしみとほる
秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり」
と歌ったこの歌は、戯曲や小説にもよく引用されるくらい有名です。
牧水は、たいそうな酒豪だったそうですが、一日一升の酒を飲んでいたという。
肝硬変を患って、44歳という若さで亡くなりました。
完全なアル中だったんでしょう。さすが一日一升はダメでしょう(笑)
「足音を忍ばせて行けば台所にわが酒の壜(ビン)は立ちて待ちをる」