いたいの いたいの…… ─『あのね 子どものつぶやき』(朝日新聞出版編)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

ことりの木*makiさんのブログで出会った言葉。

 

「ほとんどの親たちは、自分の子どもに、死ぬまでずうっと、この言葉をとなえつづけるのかな。心のどこかで。どうにもしてやれない痛みや悲しみに…いたいのいたいの、とんでいけえ。と。」
(おーなり由子、『子どもスケッチ』より)

 

「いたいのいたいの、とんでいけえ。」

おそらく何十年も、親から子へと伝えられてきた魔法の言葉。

この言葉があれば、ひざこぞうのすり傷も、柱にぶつけたおでこも、不思議と治った気になりました。

失ってはいけないふるさとのような言葉です。

 

今日、何となく手に取った『あのね』という文庫本。子どもの日常の面白い言葉を集めた本です。

この本のなかに「いたいの いたいの…」にまつわるエピソードが載せられていました。

 

いたずらをしてしかられ、お尻をたたかれた。

半べそで、「いたいの いたいの ママのところに とんでいけー」

(朝日新聞出版編、『あのね 子どものつぶやき 』より、瀬尾たかひろくん(3歳)の言葉)

 

これもまた、ほほえましい場面です。

この言葉が生まれるのは、このお母さんが、たかひろくんに何度もこの言葉をかけているから。

そして、たかひろくんは、お母さんに安心しているから。

 

この本は10年前に発刊されました。だとすれば、たかひろくんは今、中学生ぐらいでしょうか。きっとたくましい男の子に成長しているのでしょう。

そして、大人になると、この温かい思い出のこもった「いたいの いたいの・・・」を自分の子どもたちに唱えるのでしょう。