ご存知のように、、
ご覧の通りの白髪なんですね。
前から見ても横から見ても白髪。
当然、ステージでも白髪で、、
舞台で僕が音楽監督で、出演がある時に、
ミュージシャンが必ず着帽してたのは、、、
上から光が当たると、こんなに目立っちゃうから。
ならば、ミュージシャンは全員帽子にしよう、、と・・・
若い時から、僕は白髪で、、
30代くらいには、司馬遼太郎さんみたいになるんじゃないかな、
って思ってて、それは実は自分では期待してたし、憧れてもいた。
でも、僕の白髪は、完全に全部白髪にはならなくて、
わりと、まだらにグレーになって止まっちゃった。
司馬遼太郎さんのような、ゴールドがかった白髪にはならなくて、、
本当いうとちょっと残念と思ってたりする。
白髪だったことで、なんか、少し嬉しかったエピソードがある。
僕の住んでるマンションの敷地から歩いて10秒で大きな公園があります。
いつも子供がたくさんいる公園で、桜の季節には、屋台なんかも出るほど、
たくさん桜の木がある、近所では桜の名所になってるところで、、
なかなかほっこりできる。
ふらっと、散歩に出たとき、、、
5歳くらいなのかなぁ、、
僕を見て指をさして、
「変な人がいる!!」
って言ったのです。
そばにいたお母さんは、それはもうすごい驚いて、、
「こら!! 何言うの、やめなさい!!」
って叱った訳です。
ただ、男の子は、変な人がいる、と言いながら、
とても嬉しそうだったのです。
「変な人」という言葉を、大人の感覚では「不審者」と受け取る。
でも、この男の子の語彙力の中で、ここでの「変な人」は、
「変わったルックスの人」「奇妙な見た目の人」
という意味だったのだろうと思うんです。
叱られた事も意に介さず、男の子は続けます。
「すごい! 頭白い!」
嬉しそうに指をさして言う訳です。
距離的にも普通に挨拶しておかしくない距離に僕はいた。
若いお母さんは、もう、パニックです。
そりゃそうだよね、僕がどんな人かわからない。
怖い人かもしれないし、変質者かもしれない、犯罪者かもしれない、
そこに、自分の子供が、一般的に考えれば、極めて失礼な態度、
指をさして「変な人がいる」と言ってしまった訳です。
もう、子供が失礼をしたとか、そういう礼儀問題じゃなくて、
なんとかして安全を、、と思って当たり前です。
一生懸命頭を下げて、
「すいません、ほんとうにすいません、
言って聞かせますので、子供のことですから、どうぞお許しください」
必死に謝って来るのです。
でも男の子は、そんなお母さんの状況もわかんないほど、
「頭白い変な人を見た」
が、面白い訳です。
なんか嬉しそうだったんだけど、お母さんの姿に気づいて、
だんだん不安になる。
「だって、白いよ、頭・・・」
と言って、少しして、泣き出したんですね。
僕は、最初、びっくりしちゃって、
でも、男の子の様子がとても面白かったし、、
男の子の「変な人」が、悪いものを指しているのではない、
悪気が全くない、ことがすごく感じられているから、
実は、嫌な気もしてなかったんです。
でも、今度はお母さんが、もう慌てちゃってるから、
まずお母さんをなだめないと、みたいになってて、
「お母さん、そんな大げさな事じゃないよ、
おじさん、なんにも怒ってないですよ」
って言って、、
でも、お母さんは正直よほど怖かったんじゃないかな、、
一生懸命謝り続ける訳です。
僕は見た感じそんなに怖いんだろうか、、、って思っちゃったんだけどね(笑
僕が思ってたのは、
この子は、おそらく今までも白髪の人間は、見た事はあるだろう、
すれ違った事もあるかもしれないし、
一瞬、あ、頭白い、くらいには思った事があるかもしれない。
でも、生まれて初めて、
頭が白い人が世の中にいるのだ、とはっきりわかったのが、
僕、なのです。
確かに、大人の世界で考えたら、
「人を指差して変な人と言った」というのは極めて失礼です。
でも、そんな失礼の概念もまだ覚えていないだろうし、
なによりも、
僕自身がそういう子供でした。
空気を読む、とかは、できない、
思ったことがそのまま口に出る子供でした。
だから、もし僕がこの子の年齢の時なら、
目の前に現れた頭の白い人にびっくりし、
初めてみた、面白いと思って、すげーって思って、
同じように、指をさして、白い! 変なのー!!
って言ったはずです。
言ってしまうんです、そう言う子供は。
悪気なんかない。
失礼かどうかなんか、
そんなのもうちょっと経ってからわかればいい。
そんな事より、
この子が、頭の白い人間、白髪、という物を、
人生で最初に自発的に認識したのは、
僕なんです。
この事実は、もう、この子の一生の中で決して変わらないステイタス。
僕が、この子が知った最初の、白髪の人、なんです。
いずれ、僕の事自体は忘れてしまうでしょう。
それでも、最初に「白髪!」って思ったそのビジュアルには、
この子の一生で、ずっと僕がいるんです。
すごい事だと思うんだよね。
なにしろ、お母さんには、
僕はちっとも怒ってない事、
この子にはなんの悪気のない事、
この子にまだ失礼とかわからない。
ただ、珍しいものを見てお母さんに、
みてみて!ってなっちゃっただけ、
そして、
この子が一番最初に、白髪の人、を認識したのは、
このおじさんなんですよ、一生変わらない。
これは、光栄な事なんですよ、
って、伝えて、
なんか、すげーいい事した気になって帰ってわけです。
ただ、、、
その時、あの子の目に「変な人」と映ったのは、
もしかしたら、白髪だけではなく、、
その時に来ていたモーレツに派手なジャケットのせいもあるのではないか、、
と、後で思いました。
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