イングランドのラグビーファンの歌う奴隷の歌「Swing Low, Sweet Chariot」 | 優作のひとりごと 英国日記

優作のひとりごと 英国日記

英国の田舎での一人暮らし
日々のランニング、色んな病と格闘しながらも
ペットのうさぎに癒される毎日

 

イングランドのラグビーファンはなぜ奴隷の歌

「Swing Low, Sweet Chariot」を歌うのか? 

そしてその歌は禁止されるべきか否かの

議論が今、英国で行われ始めています。

 

 

https://www.twickenhamstadium.com/stadium

 

 

ラグビーフットボールユニオン(RFU)は、

多くのサポーターがアメリカの奴隷制度についての

歌としての起源を知らないことを示唆している中で、

イングランドのファンがSwing Low, Sweet Chariot

を歌うことを調査しています。

 

 

 

ジョージ・フロイドの死後、

ブリストルにある奴隷商人の像が倒されたことを含む

最近の抗議行動を受けて、多くのイギリスの組織が

奴隷制度との歴史的なつながりを

調べるようになっています。

 

 

 

ラグビーファンは意味も文脈も理解せずに

歌っているだけだと言う人もいますが、

それは正しくないとする人々もいます。

 

 

RFUは "意識を高める"ためにもっと

やるべきことがあるとしています 。

 

 

ボリス・ジョンソン首相は、

この歌を削除すべきではないと述べています。

彼は代わりに、その意味と歴史を

人々に教える機会として

使用されるべきだと考えています。

 

 

では、

この歌はどこから来ているのでしょうか?

イングランドのファンはなぜ歌うのか?

そして、物議を醸しているのか?

 

 

 

この歌はどこから来たのでしょうか?

この曲は、19世紀半ばに黒人奴隷だった

ウォレス・ウィリスによって書かれたと考えられています。

 

奴隷貿易とは、黒人を奴隷として

売買することが完全に合法だった時代のことを指します。

 

奴隷は大西洋を巡る航路を渡って売買され、

通常は綿花を育てたり摘んだりする

プランテーションで働いたり、

裕福な白人の家で働いたりしていました。

 

この歌は、アメリカでの奴隷としての

日常生活の苦労を歌ったものと考えられています。

 

この歌の最も古い録音は、1909年にアメリカの

フィスク大学の学生たちによって行われました。

 

https://www.bbc.co.uk/newsround/50169107

 

彼らはフィスク・ジュビリー・シンガーズとして知られ、

アメリカとヨーロッパのツアー中にこの曲を人気者にしました。

 

 

1969年にアメリカの人気音楽祭ウッドストックで

ジョーン・バエズというアメリカの歌手で

活動家でもあるジョーン・バエズがこの曲を歌うまで、

この曲はしばらく忘れられていました。

 

 

 

なぜイギリスのファンがこの曲を歌い始めたのでしょうか?

 

イギリスのファンがいつ頃から歌い始めたのか、

なぜ歌い始めたのかははっきりとはわかっていません。

 

1988年にさかのぼるという説もありますが、

世界で最も有名なラグビー場の一つである

トゥイッケナム・ラグビー場で、

男子生徒のグループがこの歌を歌い始めたのが

始まりだと考えられています。

 

少年たちは、トライが決まるたびに

この歌を歌うという、自分たちの伝統を持っていました。

 

試合が進むにつれ、ますます多くの人がこの歌に参加し、

それは今も続いています。

 

しかし、その1年前の1987年に

マーティン・オフィアと

呼ばれる選手がプレーした時

トゥイッケナムで歌われていたという

アーカイブ映像が発見されました。

 

このスピード感のあるウィンガーは

 "Chariots "Offiahというニックネームを持っていました。

それは、1924年のオリンピックで

レースをする2人の選手についての映画

「炎のランナー 」“Chariots of Fire”

からの言葉の遊びから来たものです。

 

 

そのマーティン・オフィアは、

『自分のこととこの歌が関係があるのかと聞かれて、

「そうは思わない」と答えたんだけど...

 RFUがこの映像を見つけたと聞いた時、

 わあ、私はこの曲とリンクしているんだ

 と思ったんだ』

と語ったそうです。

 

 

 

物議を醸しているのか?

 

一部の人々は、歌の起源のため、

ラグビーの試合で歌うのは不適切だと

考えていますが、他の人々は問題無いのでは

と考えています。

 

先週、ワールドカップで優勝した

マギー・アルフォンシ氏は、

RFU評議会の唯一の黒人として、

米国でのジョージ・フロイド氏の死を受けて、

「強力な会話」が導かれたと 述べています。

 

 

RFUのビル・スウィーニー最高経営責任者は

「我々は、管理を含むゲームのすべての分野で

多様性を達成するために、より多くのことを

行う必要がある 」と述べています。

 

 

元イングランド代表のブライアン・ムーア選手は、

1970年代にジュニアラグビークラブで歌われていた

この「スイング・ロー」の歌を覚えていると語り、

禁止されても何の問題もないと主張しました。

「私はいつもそれが嫌いだった。それは適切ではありません。

奴隷的な意味合いがあり、RFUがその決定を下すならば、

私は歓迎する」と述べています。

 

一方、マーティン・オフィアは、

RFUがSwing Low, Sweet Chariotの使用を

見直していることを歓迎してはいますが、

禁止されることは望んでいないとしています。

 

 

彼は次のように述べています。

「その歴史はおそらくイギリスの多くの人に

はあまり知られていないでしょう。

私はそれを見直しているRFUを支持しますが、

そのような曲の禁止をサポートしません。

そのようなものを禁止しようとするとき、

それはその曲を引き裂くことになります。

この件がきっかけで

RFUがポジティブな一石を投じ

民族コミュニティとの関わりを持ち、

それらの問題に対処することにつながるならば、

それが私たちの実際に望んでいることです」と。

 

 

また、イングランドのフォワード、マロ・イトウジェは、

現在のスクワッドにいる数人の黒人と混血の選手の一人で、

この曲の背景は「複雑だ」と述べています。

 

更に、イングランドのプロップ、マコ・ヴニポラは、

この曲を歌うラグビーファンを擁護しています。

「私はいつもこの曲をただのイングランドの歌だと思っていた。

それ以上でもそれ以下でもないと思ったことは一度もない」と。

 

 

 

 

 

先程、RFUの後援者でありファンでもある

ハリー王子・Prince Harryはこの見直しを支持

とのニュースが新聞記事に出ていたのを目にしました。

 

色々とこのような見直しの取り組みが

その協会本部から始まり議論されていることは

他のスポーツ団体の協会を含め、

差別に関して更に議論の機会の場を

各方面に促す事にも繋がるかと考えられますので、

この動きは評価されて良いのではないのでしょうか。