悲しい出来事と嬉しい出来事があった。

私は独裁者的で、

他人になど興味ないと思ってた。

関係ないやん、関わりたくないわ

ぐらいな他人への見方を持ってて

本当に冷たい人間だと反省する面も

多々あったりする。

だけど、迷走して混乱して

行き場が限られてしまった人が

どうしてもほっとけなくなってる。


仕事上で関わっている毎日うちの事業所に

やって来てくれる人が

ある犯罪を犯した。

普段はよく笑い、冗談が好きで

みんなを盛り上げてくれる様な

でもちょっぴりワガママな人。

病気をしたのをきっかけに、

家族を失った人。

病気をして家族が離れて行くなんて、

それなりの何かがあったんだろうとは

簡単に察しがつく。

でも、色々な支援を受けながら

なんとか独り暮らしを維持している。



うちの事業所に警察が来た。

その人が罪を犯してしまったから。

その人が警察に、

自分がたくさん受けてる支援の中から

うちの事業所の事を話したから。

私はその時、またドタバタと外回りに出て

不在にしていたのだけど、

パトカーに乗せられてやって来たと

職員から報告を受けた。

ショックだった。

唯一救いだったのは、今回は示談で

済んだと言う事。


翌日、その人はうちの事業所に来なかった。

電話にも出ない。

私も他の職員達もすごく心配して、

私はその人の独居のアパートを訪ねた。

インターフォンを鳴らす。

反応なし。

しばらくして、またインターフォンを鳴らす。

待てど暮らせど反応なし。

玄関扉の前からまた電話した。

…出ない。

わ、どうしよう。。

最悪なシチュエーションを想像して

なんだか怖くなる。

3回目のインターフォンを鳴らす。

全くの無音で、

思わず玄関扉を叩こうと構えたとこで、

ガチャ、ガチャ。

扉が開いた。

顔を見て、ホッとした!

『行こう。』

そう声をかけたけど、

『今日は行かない。絶対』

と俯いていた。

『何でや、ほらご飯の時間やで?

朝ご飯食べた?飲み物飲んだ?』

口早に言った。なんか必死やった。

『いいや…』

と答えて押し黙る。

『みんな待ってるよ?一緒に行こう!

ふさぎ込んでてもしゃあないやん、

さ、今日は〇〇の日やねんで!』

と言うと、まっすぐ私の目を見て、

やがて俯いて泣く。

そして、いつもの得意なモノマネを

その人は言い放って笑う。



泣いたり、笑ったり、

ウロウロして小窓を開けてそこから

こちらを覗いてみたり…

その人自身がどうして良いかわからない

状態になっていた。

部屋に入って行って冷蔵庫を開けたり、

『どうぞ』

と言って私を招き入れようとしたり、

靴下のまま、玄関から出てみたり。

『ほら!今日は気持ちいい青空やん、

外に行こうよ!』

一緒に空を見上げる。

『おぉ…』

としばらく空を見つめて

また玄関の内側へ行ってしまった。


結局私が引き下がった。

『月曜は必ず来てよ!絶対やで。』

と私が言うと

『おぅ。』

とだけ答える。

後ろ髪ひかれたけど、

私は思い切って扉を閉めた。



あんなに困惑して、、。

やってしまった事、どんな風に

思ってるんだろう。。

悪いのはその人に違いないが

きっと後悔もしていて、合わせる顔がない

という状態だったのかな。

もう放っておいて欲しいと

思ったかもしれない。


家族を失い、他人に支援してもらい

心にすきま風が

吹いていたんだろう。

もう成人している娘や息子の

写メを自慢気に見せてくれた事があった。

寂しさや孤独感がまとわりついて

罪を犯す事で満たされない何かを

埋めようとしたのかもしれない。


どんな気持ちで日々過ごして

いたのかなぁ…と考えれば

考えるほど、

私の心にもすきま風が吹く。