■行動を起こしたGさん

20代のGさんは仕事仲間に
約束を守ってもらえずに
悩んでいます。

そのため
仕事がはかどらず
成果もとぼしく
うつうつとした日々を
過ごしています。

約束を守ってもらえないことに
「なんで」
「どうして」と
いつも答えを求めてみるけど
どうにもわからない。

このままでは同期と差がついて
それが形になる日が来てしまう。

友人には
励まされるけど
そうされればされるほどに
気持ちは落ち込んでいく。

落ち込むほどに
心も身体もだるくなり
力も湧いてこず、
自分を引きずるようにして
なんとか日々の業務を
こなしている。

周囲から人が離れていく感じだが
今は誰にも会いたくないから
丁度よいと安心する一方で、
このまま孤立して
周囲から見捨てられてしまうのではと
怖れる気持ちも感じる。

このままでは、まずい。
なんとかしなければ
生き延びられなくなる。


そんなGさんが
私のところにやってきました。

■Gさんとのやりとり

話を聞いてみると
「かわいそうな自分」の話と
「悪いあの人」の話を
あれこれ話してくれました。

それを聞きながら
Gさんの状況を予想してみました。

Gさんは自分の仕事の成果に
自信が持てない。

今の自分の成果は
本当の姿ではなく、
自分はもっとすごいんだ、と
他者に見てもらいたい


しかし、どうやっても
今の自分の成果は
すぐには変わらない。

そこで「やむを得ない事情」が
あるために本当の成果を
見せることができない状況

生み出せば良いと思いつく。

その「やむを得ない事情」を
探してみると、
ちょうどそこに
「約束を守らない仕事仲間」がいた。

それを利用すれば
その仕事仲間が約束を守らないから
自分の仕事の本当の成果を
実現できない状況
を生み出せる。

周囲には
「その仕事仲間が自分との約束を
守ることさえしてくれれば、
自分の本当の成果を見せることが
できるんだけど...」と
”自分は本当はすごい”という
可能性を堂々と示すことができる


これは自分にとても都合が
良い状況になる。

もしこの仕事仲間が
約束を守ってくれたりすると
この都合の良い状況が
ひっくり返ってしまうから、
約束を守ってくれない状況を
保護する必要がある


だから、上司に相談したり
会社に訴えたりはしないでおこう。

もし、その仕事仲間が
今後に約束を守ってくれることが
あったとしても、
過去に約束を守らなかったのは
事実だから、約束を守ってもらえない
状況の根拠として今後も利用はできる。

でも、
あんまり守られると根拠に
使えなくなるから、
新しく約束をすることは
なるべく避けよう。

こんな状況では
なかろうか、と。

そして、Gさんに訊いてみました。

-その仕事仲間の方は
Gさんの仕事に必要不可欠な
存在ですか?

「...いえ、同じことは
他の人に頼むこともできるので、
必要不可欠といえば...」

-Gさんは、その仕事仲間の方と
どんな関係になっていきたいですか?

「...どんな関係?どんなと言われても、
仕事の上で関係しているだけなので...」

-いなくても仕事できる感じですか?

「...まあ、そうですね、そうなります。」

-ありがとうございます。
例えばですが「仕事」と
「その仕事仲間の人」とを
分けて扱うことはできそうですか?

「はい、できると思います。」

-わかりました。
仕事は今、どんな状況を
目指している感じですか?

そうして仕事を中心に
話を聞いていくと、
Gさんは自分が話す中で
「自分はもっとすごいと
周囲に見られたい」
との
気持ちに気づいていきます。

会社や上司の期待に
応えられない自分は
”ありえない自分”

思っていることにも
気づいていきます。

Gさんが、そんな気持ちを
話すだけ話し尽くした後に
訊いてみました。

-今のGさんが
よい仕事をするために
できることって何ですか?

そう訊くと
ちょっと驚いた表情になるGさん。

「え、いや、えーと...」

自分の心の核に触っている感じ。
やがて下げていた目線を
私に戻して答えてくれます。

「はい、○○ならできます。」

-そこから、始めてみませんか?

「...そんなことで良いのですか?」

-良いかどうかはわかりませんけど
今それなら始められそうと感じたので。

「なるほど...」

しばらく視線を落として
思考するGさん。

-すぐに変えられないことなら
適切な時間をかければ変えていける、
ということかな、と感じました。
「他者に自分がどう見えるか」を
一度ぜんぶ横に置いておいて
ひとつずつ自分らしく
進めてみること
もできそうですよね。

「なるほど...ぜんぶ横に置く、ですか。
ひとつずつ自分らしくっていいですね。」

-さて、それでは何から始めてみますか?

※Gさんは架空の人物であり、
内容は常楽の過去の複数の
セッションを再構成したものです。


■自分らしい道へ

「他者によく見られること」
目標にすることと、
「自分の”よい仕事”をすること」
を目標にすることは違うことです。

しかし、見た目が
「自分の”よい仕事”をすること」
となるようにして、
その中身が
「他者によく見られること」
としてしまうと言行一致せず、
違うものを同じものと見せようと
することになります。

その状態を維持するためには
少なくない労力
そこに注ぐことになります。

言行一致しない状態が
長期に及ぶと、
見た目と中身の違いが大きくなり
その違いを埋める労力も
大きくなっていきます。

その違いが大きくなり
維持できなくなると
やがて破綻します。

そのときには
普段の自分なら
「絶対にありえない」と
信じる方法を選んだりして
その破綻に対処したく
なったりします。

例えば、
失踪する、とか
泣いてごまかす、とかです。

そうならないためにも
言行一致のずれを感じた段階
目的と目標の確認をして
自分の内面の整理を進めること
です。

整理が進めば
「これが私の進む道だ」と
自ずと見えてきます。




お読みいただき、
ありがとうございます。

プロコーチ10年目、常楽でした。



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