今回は、認知症の方、またはそのご家族が施設探しをする際に気を付けたいポイントをまとめてみようと思います。
前回までに高齢者向け施設その1、その2、では介護保険施設やその他の施設を勉強しました。
色々なタイプの施設がありましたね、その中でも認知症の方に向いている施設はどこなのでしょうか。。。
結論からいいますと、
認知症向け施設は次の6つになります。
・介護老人福祉施設
・介護老人保健施設
・介護療養型医療施設
・サービス付き高齢者向け住宅
・有料老人ホーム(介護付き、住宅型)
・認知症高齢者グループホーム
※このなかでも施設によっては認知症の方の受け入れが難しい場合がありますので確認が必要です。(細かい条件がある場合も。例:徘徊が見られる場合入所は不可など)
それぞれの施設の
「要介護度」「入りやすさ」「長期利用」「費用」「24h介護」「医療充実度」「プライバシー」を、簡単な表にしましたので見てみましょう。
各施設のメリットデメリットは、
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
メリット :費用の安さ。
終身利用可能。(長期利用可能)
暴力などの迷惑行為がなければほとんどの人が入所できる。
介護専門の施設のため24h介護を受けられる。
看取り可。
認知症可。
デメリット :人気があり全国に待機者多数。
要介護3~5限定。
医療が限定的なので病気などの症状によっては入所できない。
・介護老人保健施設
メリット :費用が安い。
要介護度に関わらずリハビリテーションが受けられる。(※1)
デメリット :長期利用不可。
多床室が多く、プライバシーを守りにくい。
※1介護老人保健施設において実施される「認知症短期集中リハビリテーション」というものがあります。
認知症短期集中リハビリテーションは、
中核症状及びBPSD(認知症の行動・心理症状)の改善に有効
公益社団法人全国老人保健施設協会では、平成18年4月より創設された「認知症短期集中リハビリテーション」の効果を検証するため、長年にわたり調査研究事業を実施してきました。
この調査研究事業の結果、「認知症短期集中リハビリテーションは極めて有効であり、臨床的認知症重症度の進行予防、心の健康維持(意欲、活動性)を通じて、ADLの改善が認められる。さらに、周辺症状の改善によって在宅系居所への復帰効果が期待される」という画期的成果が得られました。この結果は厚生労働大臣の呼びかけで始まった「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」の報告書においても、認知症に対する認知症短期集中リハビリテーションが、中核症状及びBPSDの改善に有効であることが示されております。
引用:公益社団法人 全国老人保健施設協会
http://www.roken.or.jp/wp/about_roken/ninch
・介護療養型医療施設
メリット :費用の安さ。
充実した医療を受けられる。
病状が安定していれば、重度認知症や寝たきり状態でも入所可。
ターミナルケア(※2)が受けられる。(寝たきりになり介助されても食事をとれなくな った時から)
デメリット :2017年に後6年延長が決まったが、今後は廃止されることが決まっている。
医学的なケアが中心のため、レクリエーションなど生活面のサービスは
受けられない。
・サービス付き高齢者向け住宅
メリット :入居一時金などがなく、初期費用を抑えられる。
一般的な賃貸住宅と似た性質のため、外出などが自由。
要介護度が低いうちから入所可。
デメリット :介護サービスが付いているかいないかは施設によるため、要確認。
介護度が低い方向け。
認知症受け入れ可能か施設による。
・有料老人ホーム(介護付き/住宅型)
メリット :長期入所可。
24h介護。
認知症ケア充実。(専門知識を持つスタッフが多い)
終身利用可。
プライバシーが守られる。
デメリット :高額な費用。
認知症受け入れ可能か施設による。(受け入れOKがほとんど)
・認知症高齢者グループホーム
メリット :少人数のユニットで共同生活するため介護の目が届きやすい。
認知症に特化した施設のため、専門のケアが受けられる。
入居者の症状に合わせて、出来ることをしながらリハビリを行える。
身の回りの物を持ち込み可。
看取り可。
デメリット:医療ケアが充実してないので、その必要がでると退所しなければならない。
住民票がある地域の方しか入所できない。
共同生活ができないと入所が難しい。
介護度が低い方向け。
介護度と医療依存度を合わせた施設選びイメージはこんな感じです。
介護度でいえば、
サ高住、グループホーム、有料老人ホーム、 < 老健、療養型 < 特養
医療依存度でいえば
グループホーム、サ高住<特養、住宅型有料老人ホーム<介護付き有料老人ホーム<老健、療養型
という感じになります。
ご自身の介護度や必要な医療ケアの必用度合いによって施設選びをすることになりますので、どの施設が向いているかだんだんと見えてきたのではないでしょうか。
※2「看取り」と「ターミナルケア」の違いについて説明したいと思います。
看取りとは
その人らしい最期を迎えるために、医師の指示による苦痛緩和等の処置や介護を行い、施設で家族に囲まれて安心して最期を迎えるような環境を整えること。
ターミナルケアとは
「終末期医療」、「終末期看護」ともいい、延命治療は行わないが、病気などによる肉体的苦痛や精神的苦痛を緩和・軽減することが目的の医療的処置のこと。
出典:ウィキペディア 一部引用
「看取り」と「ターミナルケア」とでは、介護という観点からのケアなのか、医療という観点からのケアなのかで少しその意味合いが違うようです。
ここで、前述した認知症高齢者グループホームのメリットデメリットに注目してみて下さい。
メリットに看取り可、とあるのに対し、デメリットに要介護度の低い方向けとある。
(一概には言えないかもですが)看取るという状況であれば、必然的に介護度は高くなるはずだと思うので、これでは矛盾があるな、、、と不思議に思ったので調べてみました。
するとこんな現状がありました。
年月を経るに従い入居者の状態は変化し、認知症のレベルもADLも通常の高齢者の3倍ほどのスピードで重度化してきている。終の棲家ではないはずのグループホームにおいて、好むと好まざるとに関わらず看取りを経験したホームも多いと思う。
つまり、地域密着型サービスとして、住み慣れた地域での継続的な支援を考える場合、重度化対応や、看取りの問題は避けては通れない課題であるといってよい。
入居者家族の意識調査をみると、身体状況が悪化したときに希望する介護の場所は「現在のグループホーム」とする回答が約7割、看取りの場所については 64%がグループホームと回答している。
本人・家族が、暮らしなれた馴染みのあるグループホームでの看取りを望むのであれば、グループホームは日常ケアの延長にある当たり前の支援として、それに応えていくべきではないか。そして、そのニーズに対応し得る支援体制を整えておくことが重要である。
出典:2007年 特定非営利活動法人全国認知症グループホーム協会
「認知症グループホームにおける看取りに関する研究 事業調査研究報告書」
お分かりいただけましたか?
入所希望のころは軽度であったとしても、時がたつと重度化するケースが多く、ご家族などのアンケートによればグループホームでの看取りを希望される入所者がおよそ6割ほどとのことから、それに応えるべくグループホームが看取りを実施した。という経緯があるようです。グループホームの力量によっては看取りを行わないホームもあるようです。
ちなみにこの資料は2007年に特定非営利活動法人全国認知症グループホーム協会によって作成されたものですが、現在2017年です、この10年の間に看取りに対応できる施設の環境や教育が進み、入所者が希望の場所で最期を過ごせるようになっているとよいのですが・・・。
最期(=ターミナル)を話し合うって本当に難しいことだと思います。
本人の希望の形で最期を迎えさせてあげたいと思うのが家族のお気持ちでもあり、と同時に
最期なんていまから考えたくないよというのも正直なお気持ちでしょうし。
ですが、認知症という症状の特徴からすれば、最期が近いころには意思が伝えられない状況になることが多い、ということも念頭に入れておかねばなりません。
とても難しい問題です
これら特徴をふまえた上で、、、
認知症高齢者が施設を決めるときに必ずしておきたい5つのこと! それは・・・
1.施設の見学(環境、介護スタッフの様子、設備)
2.複数の施設を見学して比較(体験入所などがある場合はどんどん活用)
3.サポートの内容(徘徊や問題行動に対する施設の対応や有資格者の数も確認)
4.介護度の変化への施設の対応を確認
5.無理のない費用の施設を選ぶ(長期になることを考慮して)
各項目の解説すると、
1.施設の見学(環境、介護スタッフの様子、設備)
衛生的な環境にあるか、介護職員の動きや言葉遣い、活気があるか、笑顔があるかなどがチェクポイントです。
慌ただしいよりはゆったりと入所者や介護者が笑顔で過ごしている施設が良いです。
2.複数の施設を見学して比較(体験入所などがある場合はどんどん活用)
同じ有料老人ホームという括りだとしても、その内容は施設ごとに千差万別でしょう。
タイプの違う施設の比較はもちろん、同じタイプの施設でも内容には違いがあることを忘れないようにしましょう。
3.サポートの内容(徘徊や問題行動に対する施設の対応や有資格者の数も確認)
介護サービスの内容確認のみではなく、問題行動が出た場合の施設の対応なども是非聞いておきたいですね。また施設の多くには認知症の専門知識をもった有資格者がいます、有資格者の人数やどんなケアを受けられるのかなども確認しましょう。
4.介護度の変化への施設の対応を確認
介護度は通常 軽い⇒重い と進行します、介護度が重くなっても入所していられるかなどはきちんと確認しましょう。
5.無理のない費用の施設を選ぶ(長期になることを考慮して)
長期利用になる可能性を考えて、無理のない費用の施設を選びたいですね。
様々な助成制度などもありますので、該当者は利用したいですね。
といった感じです。
特に、認知症はその種類(型)によっては問題行動が目立つ型もあり、一旦入所してしまってから、問題行動(徘徊、被害妄想、暴力、暴言)などによって退所を迫られるケースも少なくないため、どのような場合に退所しなければならないのかをケーススタディしておくこと、
また入居一時金などの契約金の返還などもトラブルのもとになるようなので、事前の確認が重要です。
いかがでしたでしょうか。
今回は認知症高齢者に向いている施設を勉強しました。
その1、その2と重複した内容になっているところもありますが、
復習も兼ねることができました
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました~