2年前のスウェーデンの視察レポートです。
ファミリーセンター(ソーレンチューナ市)
幸福度も高く、社会福祉が充実し、出生率も安定しており、2018年SDGs世界ランキング1位の国、スウェーデンから子育て施策を学び、国民が子育てに不安を感じない国が、どのような子育て施策を行っているのか現地視察とヒアリング調査を行った。
スウェーデンの社会では、それぞれの市がファミリーセンターを持っている。
県と市で役割が分かれており医療は県、社会福祉は市がサポートしている。
社会福祉、就学前教育、医療の3つのサポートがファミリーセンターを構成している。
ソーレンチューナ市ファミリーセンター
ファミリーセンターは4つの柱から成り立っている。
① 助産師による母子保健指導室(県) → 定期健診など妊娠期のサポート
② 社会福祉局のカウンセラー(市) → 妊娠・出産・育児全般の精神的サポート
③ 小児保健指導室(県) → 健康診断・予防接種のサポート
④ 1歳から5歳までの就学前教育(市)
ソーレンチューナ市にはファミリーセンターが3か所ある。妊娠した時からファミリーセンターを利用し、小児保健指導室では健康診断や予防接種などを行い就学前教育も同じ場所にある。子供のことで悩みを抱えた人は、カウンセラーに話を聞いてもらいサポート受けることが出来る。小児保健指導室や就学前教育でも相談を受けることができる。初めての出産育児に親たちがうつになりやすいことがよく分かっており、さらに悪化した場合には精神科にて治療をする。妊婦のグループを設置していて、妊娠をしている人たちが出産をした後にどういう状況になりやすいか、どういったサポートがあるかを説明している。助産師と共同でサポートを行い良い知識を提供する場所として使われている。同じような状況にある人たちと出会うことが出来、親同士のつながりを生み出すことも目的で、社会的な結びつきを作る場所でもある。シングルマザーや、これから子供を産む人が、孤独にならず社会的な参加が出来るよう努めている。就学前教育は、父母祖父母のいずれかと一緒に参加できる。子供たち同士で遊んだり、親同士でコミュニケーションを取ることが出来、サポートが必要な親たちをそのような機会で見つけ出していくことが出来る。新しく親になった時期は、とても神経質になるが、ここでケアを受けることが出来る。外に出かけるのが難しい人たち、施設に来るのが難しい人たちがいることも分かっており小児保健指導室では看護師が家庭訪問を行っている。一緒にカウンセラーがついて行き様々な情報提供を行う。彼らが行っていることは問題が起らないためのあくまで予防策である。暴力や児童虐待など、子供の置かれている立場がよくないと感じた場合には指導者だけでなく近隣の人はもちろん、それを感じた人が社会福祉局に届け出る義務がある。
◎団員の質問
質問①街では子供連れの男性を頻繁に見かけました。施設内では赤ちゃん連れの男性を多く見かけます。男性はいつからファミリーセンターを利用したり、このサポートに参加をするのですか?
回答①スウェーデンでは育児給付金をもらう男性の割合が高く、かなり多くの男性たちが育児に参加しこの施設を利用しています。就学前教育に関しても、多くのお父さんたちが子供を連れて参加しています。
質問②スウェーデンでは男性が立会出産をされることは多いのでしょうか?
回答②通常出産にお父さんが立ち会うことが多いです。出産前からお父さんお母さん共にファミリーセンターに参加されることが多いです。県の方の管轄ですが、小児保健指導室ではお父さん、お母さんがそれぞれ子供にどのような対応の仕方をしているかを記録しています。
質問③利用者が負担する料金はありますか?
回答③料金は税金で賄われており、県と市が負担しています。当事者の利用料は掛りません。コーヒータイムにかかった費用は自己負担し、コーヒーなどを買うこともできます。県の方の母子保健指導室が助産師と協力し、妊娠してから出産前までのケアをこちらの施設で行います。それまでの記録をもって病院に行き、赤ちゃんが生まれると赤ちゃんのケアを小児保健指導室が対応します。お母さんの産後のケアは母子保健指導室が産後の検診などを担当します。出産は病院に入院して行います。
質問④出産してから何日くらいで退院しますか?
回答④全く異常のない場合は、出産した当日に退院をする場合もあります。出産すると病院から小児保健指導室へメッセージが送られます。小児保健指導室が両親に連絡を取り、家庭訪問を行います。母子保健指導室は退院した後、一度検診があります。小児保健指導室をどこで受けるかは自由です。一連のサポートはすべて無料です。
質問④この施設には何人の保健師、助産師が配属されていますか?
回答④ファミリーセンターと同じ場所に看護師のオフィスがあります。
1施設に10名の保健師が指導しています。この市では人口7万3000人に対してファミリーセンターは3施設。県の地域医療センターが、すぐそばにあります。看護師、医師などがすぐそばの地域医療センターに待機しています。
質問⑤ファミリーセンターでは何歳までの子供のケアを行っているのですか?
回答⑤母子保健指導室では妊娠期から出産、1歳になるまでのサポートを行います。すべての子供たちは小児保健指導室とコンタクトを取っています。たとえば精神的な問題がある場合、小児保健指導室から医療機関に依頼を出すことが出来ます。1歳から5歳までは小児保健指導室で予防接種や健康診断などの医療と就学前教室が行われます。
就学前教育の部屋
IKEAのショウルームのような明るくおしゃれなインテリアが施されている
コーヒータイムに利用することが出来るキッチン
質問⑤ファミリーセンターに来ることは、義務付けられているのですか?
回答⑤義務ではありません。センターに来ない人たちには家庭訪問を行っています。こちらの施設は県と市が共同でサポートし、双方が税負担を行っています。就学前教育は市内の3か所のファミリーセンターで行われていますが、それ以外に教会などが運営しているオープンスクールがあります。日によって、就学前教育に行ったり、教会のオープンスクールに行くこともあるので、必ずしも同じ所に行かなければいけない訳ではありません。
就学前の子供たちが遊ぶ部屋はカウンセラーの部屋とつながっている。
質問⑥特別なケアが必要な人たちには、どのような対応を行っていますか?
回答⑥私たちは移民の多い地域や、特別なニーズのある人にそれぞれ柔軟に対応し仕事の仕方を変えています。家庭訪問は特に外国人の方、移民の方に適しています。外国人の方が多く住んでいる地域が町の中心にあり、私たちはその地域に適したやり方で仕事をしています。
質問⑦スウェーデン全体でファミリーセンターのサポートがあるのですか?
回答⑦各地にファミリーセンターの施設があります。特にストックホルムはファミリーセンターに力を入れています。北スウェーデンにもありますが車で1時間以上運転して行かないといけない場所もあり、ファミリーセンターをスウェーデンの全国各地に広げるための組織があります。県と市が分担している共同の福祉サービスが、必要な人に届くようにすることが目的です。
質問⑧首都があるストックホルム市と、ソーレンチューナ市では、それほどサービスの質に差はないということですか?
回答⑧はい。そう思います。カウンセラーたちのいる部屋のドアは、常に空いていて子供たちが気軽に訪れます。ファミリーセンターには小児保健指導室、初期医療施設があり重要な役割を担っています。
◎特徴と違い
一か所で妊娠から子育てに関するすべての情報とサポートがあり悩みを相談することもでき
親の働きやすい環境としての保育や育児ではなく、子供の人権を守り、育てるための施設。
一人で育児をさせないためのサポートが充実している。
もっとも育児が大変な時期に親を孤独にさせない。
ワンオペ育児とは無縁。子供の権利を守ることへの社会の意識が高い。
出産費用が無料。育児給付金があり、男性の育児参加が社会的に保障されている。
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日本では、「子供を産み育てることが不安」という声をまだまだ多く聞きます。
それが出生数の減少、婚姻率の低下、離婚へとつながっていると考えられます。
育児を社会全体の責任として取り組んでいることが良くわかり
安心して子供を産み育てられる理由がありました。