懐かしい記事をアップします。
私たち区議会議員の活動記録は、年報にまとめられ、一般に公開されています。
その中に私が書いた、スウェーデンの視察レポートが掲載されております。
久しぶりに、読んでいたらはるか昔のように感じました。
本当に大変な視察だったので、
ほとんど寝ずに深夜便で現地に入り、スウェーデンとドイツの二カ国を4日間で、13か所視察研究項目をこなすという超ハードスケジュール。
事前勉強会を開催し、スウェーデンの資料を読みあさり、SDGsの勉強をしたり、かなり大変だったけれど
今となっては本当に勉強になったし、いい経験でした。
その経験から得た学びは大きく、大田区の地球温暖化対策や教育、福祉の取組みに度々質問でも取り上げています。
~2019年11月スウェーデン視察レポート~
森の保育園
スウェーデン、ストックホルムの「森の保育園」を視察した。
視察をした11月は午後4時頃には日没し、朝晩はマイナス3度くらいまで冷え込み、日中も太陽は夕暮れの高さまでしか登らない。保育園に着くと霜が降りた園庭で、子供たちが木登りを楽しんでいた。どんな天候でも毎日森で過ごす。
35名の子供たちに対して7名の保育士、調理士が1名。広い園庭には保護者が作った川やバス、海賊船がある。スウェーデンは冬の間、日差しがあまりないので園庭のライトは日中も点灯している。小屋の中に入ったり高い木に自由に登る。でも指導者たちは、絶対に子供たちが木に登ることを手伝わない。「自分で登ることが出来れば降りることが出来る、登ることを手伝うと降りられなくなる」と自立心を育てる教育をしている。道具小屋は暖かく保たれており、リンゴなどが凍らないように保存されていた。のこぎりなど危険な道具の使い方も教えている。2018年に改定された学校庁の新しい教育プログラムに従って指導している。小学校以上は一定の学力に到達しなければいけないが就学前教育には到達目標はない。
スウェーデンでは小学校から大学までの教育費は無料で公立私立のいずれの教育施設も自由に選択することが出来る。就学前教育は1歳から5歳までで、森の中で遊ぶことを大切にしており、保育と幼児教育を同時に行う。費用は利用者が負担する最高限度額が決められており、それ以上は支払う必要はない。第1子より第2子、第3子の方が優遇される。屋内の保育施設では感染症に掛かりやすいが、屋外で過ごす森の保育園では真冬でも感染症にかかりにくい。王位を継承するスウェーデンのヴィクトリア王女も森の保育園の就学前教育に通っていた。森の保育園の教育法は、広く受け入れられており希望者が多い。
遊牧民族のテントがあり中で火を焚き火の使い方を教えている。
園庭にはニワトリが飼われ、海賊船の隠れ家や手作りのコンサートホールのようなステージがあり、木にはロープがぶら下がっており登れるようになっている。
5歳児クラス年長は現在17名、子供たちに親しまれている森の妖精ムッレが至る所に飾られている。
屋内には子どもたちの作った作品が飾られており、材料は好きなものを使い、扱うのが危険な道具の使い方を学んだり、縫ったり工作をする。近年コンピュータでの読み書きが中心になってきている中で手を使うトレーニングを重要だと考えている。読み書きの学習は、義務ではなく、自発的にやりたい子たちがやり、誰かができると他の子も興味を持つようになっていく。子供たちの日々の記録や写真を、デジタルではないアルバムに保存をしており子供たちはその記録をとても楽しみにしている。子供たちが作ったハロウィンのオバケの作品などが飾られていた。この辺りは日本と似ている。
特に目を引いたのは、子供たちが作った地球の作品である。
植物が光合成し酸素を作る様子や、その中で人間や動物が暮らしていることがよくわかる。
園庭には生ごみをたい肥にするコンポストがあり、
たい肥になったら花壇の土にまき、自然に還す教育をしている。
ごみを拾ってきて土に埋め、数日後に掘り返す。
色々な素材のゴミが土にかえる様子を学んでいる。
鉄などは自然に返らないことを確かめる。
土に埋めてしまえばごみは見えないけれど、
どのゴミが土にかえるか、かえらないか、危険なゴミかを見極め、
遊びながら自然の摂理や資源の大切さを学んでいる。
保護者が園の活動に参加をする事は多く、この日も保育補助にお父さんが一人入っていた。
保育士が病気で休まなければいけないときは、保護者が手伝うこともある。また、スウェーデンでは子どもの体調不良で両親が休まなければいけないことに職場は理解があり休みを取りやすいという。保育士たちの休憩時間は毎日30分。
保育士への労働環境への配慮から、おむつ交換台は電動で上下の可動式になっており腰を痛めないように工夫されている。子供たちは自分でよじ登り、ボタンを押したがる。
植物の目という名の1歳児クラスでは、室内で子どもたちが劇をしたりクッキングのおままごとやトイレトレーニングをし、リュックサックの荷物の用意を大人が手伝いながら訓練している。子供たちは自分たちのリュックサックを誇りに思っている。
驚いたことに1歳児2歳児の子供たちは毎日2時間ぐらい外に置かれたバギーの中でお昼寝をする。
寒さにも慣れ体が丈夫になるとのこと。3歳児以上は室内でクラシックの音楽などを聴きながらお昼寝をする。
子供たちの森の散歩について行った。私たちは足場の悪い森の道を歩くのに苦労したが、子供たちはとても上手に歩いていた。4歳児クラスの子供たちがスウェーデンで親しまれているムッレの童話の森、山、水、宇宙の4人の妖精の歌を楽しんでいた。
週に3回、外でおやつを食べる日があり、この日も子供たちが森の中でおやつを食べていた。
スウェーデンの冬の寒さは厳しいので衣服の防寒対策も教えている。肌着はウールが一番温かく、柔らかいもの、暖かいモノ、風を通さないものの順番に着せていく。
森には境がないので、子供たちには先生が見えるところにいるように教えている。
万が一森の中で子供を見失った時は10分以内に警察に届け出ることが義務付けられている。
この森は市の所有だがスウェーデンには自然共有権があるので、すべての森は共有のもので誰でも立ち入ることができる。
8月が新学期。2週間慣らし保育があるが1週間で慣れることが多い。この日は特に冷え込み、まだ寒さになれていない子供たちが4人帰りたいと言って保育園に歩いて帰っていった。
無理に我慢をさせないことも大事にしている。
霜が降り、冷え込む森の中でも他の子供たちは楽しそうに元気に走り回っていた。
スウェーデンでは多くの保育園で森の活動を取り入れており、子供のうちは森の中で遊びながら、人間と自然環境の関わりを学ぶ。
単に森の中で自然に触れることを目的にしているのではなく、
自分たちも地球の中に住んでいて、人間が自然環境を壊してはいけないことや
他の動物たちの邪魔をしてはいけないこと、
ごみを自然に還すことを保育園の時から学んでいる。
これらは読み書きの勉強よりも大事なことだとされている。
日本では、SDGsと言われても何からやったら良いか分からない、行政や大企業がやる事と捉えている人が多い。
子供たちが瓶の中に作った地球は、植物が酸素を吐き出し、生きている様子がとてもよくわかる見事なものだった。
このように環境や自然保護について考える機会が多いことが、スウェーデンの持続可能な社会やエネルギー開発の原点になっており、2018年SDGs世界ランキング1位という成果につながっていると思う。
しかし、それは最初からスウェーデン人が必死でそれを目標にしてきたわけではなく
スウェーデンの自然保護や環境教育の成果である。
彼らは子供の時から自然に親しみながら楽しく、持続可能な社会を作るための教育を受ける。
そこにあるのは特別な技能ではなく、自然と共存すること、環境への配慮、社会のルールや知恵である。
森の妖精ムッレが子供たちに親しまれているように、地球上に生きるすべて物を大切にすることであり、日本でも実施することが出来る。スウェーデンでは地方自治制が敷かれており、各市が自分の市の税率を決めることができる。車の通行量が多い時間帯は、高めの通行税を取り渋滞回避の工夫をしたり、高性能な廃棄物処理施設がある市は、税金を優遇するなど市が独自に取り組んでいる。
スウェーデンでは、家庭ごみの99%のリサイクルを実現しており、森の保育園で培われた教育が、バイオガス、風力、水力などの自然エネルギーを生かし、経済性と環境保護の両立を実現したロイヤルシーポートのなどのまちづくりへとつながっている。
クリーンエネルギーのまちづくり、99%家庭ごみのリサイクル、地球温暖化対策が、保育園の頃からしっかりと根付いていることに感動した。
地球を大事にすることが、動物や人や、モノを大事にすることにつながっていると思う。