先日、スペイン大手新聞で、「過度な商業化がスポーツの過密日程を生み、いまアスリートを限界まで追い込んでいる」という厳しいトーンの特集が組まれていた。とても興味深い記事であった。

スペイン語しかも有料記事なので、下記にざっくりと私の理解を要約してみたい。

概要は、過密日程が過ぎてアスリートを酷使しているという内容。

Rマドリードのアンチェロッティ監督は「代表入りするような選手たちは、チームに戻ってきてから次の試合までに物理的な時間がないので、ピッチでのトレーニングを割愛し動画を使って試合の準備をするしかない」と嘆く。

ガビ(バルサ)やペドリ(バルサ)といった若手選手は20歳前ですでに10,000分出場の負荷を記録している。ベリンガム(Rマドリード)に至っては14,000分にも達する。

同様に若くして活躍していたティエリ・アンリ、フランク・ランパード、スティーヴン・ジェラードなど当時の選手たちは、同じ年の頃、約4,000分の負荷であったという事実。

・年々高まる過密日程
・高負荷状態の連続
・移動距離
・移動時間
・休息時間の減少
・休息の質の低下

身体的、精神的に、トップアスリートはオレンジのように絞りあげられてしまいカラカラになっている。

アスリートを最適な状態に戻すための「回復時間」すら奪われているのが実態。

疲労回復対策は「質の高いトレーニングxリカバリーx睡眠」のサイクルが不可欠。

しかし現状72時間ごと高負荷(試合)をかけ続けている状態の選手たちに、このサイクルを施す時間すら物理的にない。

チャンピオンズリーグにせよ、ワールドカップにせよ、クラブWカップにせよ、試合数が増え続ける中で、改善どころか益々アスリートを搾り取ることによって経済的な利益の最大化をはかっているに過ぎない。

いま起きているアスリートの怪我の9割は重商主義が過熱した負の遺産。

人体には限界がある。

休息無しでは回復はあり得ない。

トレーニング効果は休息をとることで初めて生まれる。

近年、これまでできなかった抗酸化レベルの可視化が可能となり、異化能力(代謝過程)や疲労の現れ方がわかるようになりケガや故障を予防する対策をとることはできるようになったものの、しかし最後その選手を起用するかどうかは、監督の判断と決定に委ねられてしまう。

また、ホメオスタシス(生体恒常性)の原理によると人体は左右の体温がほぼ同じにあるが、過密日程のため休息期(レスト)や回復期が確保されない現状において、アスリートは人体左右の体温のバランスを大幅に崩すことがある。

人体左右の体温のバランスを画像処理し非対称性を抽出、0.3度の差を「リスク」と判断、アラートを鳴らす。

私たちのクラブでも、当然、アカデミーの選手にもサプリメントなどを用いながら個々にカスタマイズしたサポートを行っているし、トップは更に体制を強化し徹底したコンディション管理を行う。

当然、疲労物資をはかったり、わずかな体温のずれを監視したり、こうした技術の進歩も利用しながらアスリートをサポートするも、現場の肌感覚からもそろそろこのビジネスモデルは限界にきていると感じる。