世界には「ブルーフラッグ認証」というビーチの質を評価する制度がある。

【ブルーフラッグ認証】

この認証を得るには、
①水質
②ゴミ・廃棄物、トイレ
③アクセシビリティ
④安全性、ライフセービング
など30以上のサステナビリティ審査基準を満たす必要がある。

ここスペイン国内では、なんと627ものビーチがブルーフラッグ認証を得ており、その数世界一。

そんな私も地中海に面するビーチ沿いに住んでいるが、年々ビーチ環境が良くなっていることを実感している。

アクセシビリティでいうと、車いすで砂浜にアクセスできるよう整備されていたり、当然障がい者用のトイレが常設されている。

そしてこの夏、感心したのは、海水浴のサインフラッグの進化だ。

スペインのビーチでは、毎朝ライフセーバーが「緑」「黄色」「赤」の旗(サインフラッグ)を立てる。

緑は「波は穏やかなので安心して遊泳を楽しめますよ~」の印。

黄色は「少し波があるので気を付けながら遊泳を楽しんでくださいね~」の印。

赤は「波が強いので入水せず砂浜で楽しんでね~」の印。

そして、今年からこれら3色の旗にそれぞれ図形のようなものが描かれていることに気がついた。

近所のひとに聞いてみると、これは色弱と呼ばれる色覚特性を持つ人が、色を見分けることができるよう開発された ColorADD(Color identification system) というものだそう。

 

欧州では、男性12人に1人、女性200人に1人が色弱など色覚特性を持つという。これは、かなりの確率だ。

ColorADDフラッグは、海水浴場で遊泳を楽しむあらゆる人の安全を担保するために、社会ができるちょっとした工夫なのかもしれない。

そんなことを考えていたら、ふと不安になった。

もしかしたら、私がこれまで指導をしてきたチームにも、色を識別できない選手やコーチたちがいたのではないだろうか。

そもそも日々の活動の中で、イエローカードやレッドカード、両チームのユニフォーム、GKやレフリーのシャツの識別すら困難な選手やスタッフがいたのではないだろうか。

そんな彼らは、私にそれを言い出せずにいたのではないだろうか。

トレーニング時には、何色ものカラーマーカーとビブスをフル活用してトレーニングを組み立ててきた。

見栄えのするトレーニング構築をした自分に満足すらせよ、そこには色覚特性を持つ人への配慮など一切なかった。

【誰もが楽しめる環境を目指したJリーグ】

当時私は特任理事という立場であったが、「Jリーグは『誰もが楽しめる環境』を目指し、カラーユニバーサルデザイン思想からネーム&ナンバーの『視認性』を高める」という提案がなされたときの衝撃を、今でも鮮明に覚えている。

(抜粋) 「誰もが楽しめる環境」を目指して

橋場「『カラーユニバーサルデザイン思想』と『クラブカラーとのマッチング』という2つの基準から選んだ結果、5色となりました。まずは視認性の高い色を選ぶために、カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)さんに相談させていただいたところ、『どの色と組み合わせても見やすい色』があるとわかりました。また、その時にCUDOさんからは色覚に特性を持った人が非常に多いというお話もうかがったんです。色覚特性の中にもいろいろな型があるのですが、一番多い型の特性を持っている方は男性で20人に1人、日本だけで300万人以上にも上る。世界だと2億人以上で、血液型がAB型の男性の数に匹敵する割合だそうです。そうして色の識別に苦しんでいる人にも、不自由なくサッカーを楽しんでいただきたいという想いもあります。それも導入の経緯の一つです」


ラ・リーガは、数年前から統一N&N(ネーム&ナンバー)をマストとしたコーポレートデザインによるブランディングを徹底、さらにはスタジアム内部のデザインもコーポレート基準で統一されており、このあたりは厳しくリーガに管理されている。

今シーズンからは更なる飛躍をもくろみ新デザインをもって新たなブランディングを仕掛けており、明確な成長戦略の思想をもって経営が進められている。

しかし、Jリーグが当時そうしたような「より良い社会の構築」に起因する思想は、お恥ずかしながらここには感じられない。

少なくとも私が知る限り、ユニフォームにもネーム&ナンバーにも、ユニバーサルデザインといった配慮は残念ながらなされていない。

一方、お隣の国ポルトガルでは、ベンフィカが「ColorADD」を採用しキッズのスクール活動を行っているようだ。( ベンフィカのColorADDスクール活動 の様子)
 

どんなに想っても、地球を丸ごと、人類すべてを救うことはできない。

でも、自分にできることから、ひとつずつ取り組んでいくことはできる。

まずはクラブ内で、ColorADDの話をしてみようかな。