育成大国といわれるスペインだが、19~23歳の育成環境が常に課題とされてきた。それはいまでも同じで、なかなかこれといった策が見つからないまま今に至る。

 

近年、国家レベルでフットボールの強化に力を入れ、選手育成プログラムやプロジェクトを力強く推し進める国は少なくない。

 

私たちもこれまで他国の育成プロジェクトにあらゆる形で協力してきたが、例えばうちがこれまで参加したものだと、

 

① カタール

欧州の指導者など人材をカタールに招聘雇用し、自国の育成プログラムに従事してもらいながら、欧州を中心に世界中からチームを招待、トレーニングマッチや国際大会を開催することでハイレベルな試合環境を提供。

 

② 中国

自国で選抜した中学生をスペインのビッグクラブに送り込み、「そちらの環境で最低3年間育ててね」という大胆なプロジェクトを長年続けている。

 

③ "プレミアリーグU21"

欧州ビッグクラブのU21を招き、シーズンを通してハイクオリティな試合環境の確保に努める。

 

④ サウジアラビア

そして今回、私たちが参加させて頂くのが、サウジアラビアが国を挙げて男子サッカーの強化を試みるこちらの育成プログラム。

 

これは、サウジアラビア・スポーツ省が行っている男子サッカー強化プロジェクトで、自国U21年代のトップ選手をスペインに住まわせ、欧州の環境下でトレーニングを積み、よりハイレベルな試合を経験しながら成長を図るというもの。

 

選手はスペインで寄宿生活をし、トレーニング、メディカル、サイコロジストなど徹底したケアーを受けながら生活している。

 

参加チームの本気度が高く、質の高い試合環境の提供が重要であるとの理解から、彼らが独自のトーナメント大会を水曜日開催で主催している。

 

招待を受けたスペインのクラブは、バレンシア、レアル・マドリード、ビジャレアル、レアル・ソシエダの4クラブ。

 

ピリオダイゼーションにおける高負荷をかけるタイミングは、ミクロサイクルでいうと当然週末の公式戦となるが、そこで出場機会が無いもしくは充分でない選手のために、また故障から回復したばかりの選手のリアップ目的として、高負荷をかけながらレギュラー組との差が開かないよう調整するために、こうしたミッドウィークの「準本気」試合は大変ありがたい。おそらくスペインの他クラブも同じ感覚であろう。

 

私たちは各カテゴリーとも22名の選手でチーム構成しているので、U23、U21、U19、U18といったカテゴリーから混合チームを編成して参加することになりそう。いずれにしても、コンディションの格差、また他国クラブとの対戦機会という体験という視点からも、こうしたハイクオリティなゲーム環境を提供頂けるのは、私たちにとっても大変ありがたい。

 

また、スペインの4クラブはあえて対戦を避けるよう配慮もされており、欧州他国の戦い慣れない相手と対戦する機会を得る。

 

その他の参加クラブは、

  • (フランス)ASモナコ
  • (セルビア)レッドスター・ベオグラード
  • (ポルトガル)スポルティング・ポルトゥガル
  • (ベルギー)KRCヘンク
  • (ギリシャ)AEKアテネ
  • (フランス)オリンピック・マルセイユ
  • (イングランド)ニューカッスル
  • (オーストリア)FKアウストリア・ウイーン
  • (ギリシャ)PAOKサロニカ
  • (チェコ)SKスラヴィア・プラハ
  • (クロアチア)NKディナモ・ザグレブ
  • (ギリシャ)オリンピアコス

 

こうした多様なフットボールに触れる新たな経験が、私たちの選手にとって大きな財産となることは間違いない。

 

サウジアラビアU21は「Saudi Future Falcons」と呼ばれ、Green FalconとWhite Falconの2チーム組成されている。

 

サウジアラビアの21歳前後のトップ選手たちに、遠くスペインで長期育成プログラムを提供するというサウジ国家の本気度に圧倒されると同時に、フットボールが持つ可能性を痛感。

 

サウジアラビアから今後どのような選手が育ってくるのか。また、私たちのクラブの選手たちがこうした経験をどのように生かすのか、これからが楽しみだ。