Jリーグでは、「役員を対象とする360度評価」という取り組みをしている。

 

これは、従業員だけを評価するのでなく、お互いにされたり・したりの双方向フィードバックである。


私は、1on1など他者へのフィードバックを行うとき、つい人を「良い・悪い」や「出来る・出来ない」といった2極論で整理しようとして失敗する。

そもそも他者評価とは、「クリーンフィードバックはためになる」とか、「嫌なことでも貴方のためになるから我慢せよ」といった類のものではないと、私は思っている。

人間だれでも触れられたくないことや、指摘されたら嫌なことがある。

欠点や弱点を指摘されたら「面白くない」という感情は、ごく自然のこと。

そもそも、フィードバックを実施することによって、その人との関係性が崩れてしまっては元も子もない。

フィードバックとは、「その人に気付きを促すものであり、良い悪いを指摘するようなものではない」と思う。

 

何故なら、それはジャッジメントに過ぎないからだ。

かといって、当たり障りのない耳障りの良い言葉ばかり並べる場になっては、それもまた意味がない。

じゃあ、どうすればいいのだろう?

私は、いまだに上手にできないけれど、指導者や選手との1on1でのフィードバックで苦労していたとき、
 

「感情を起点にして、その人と自分の間に起こった何か(エピソードなど)を思い返してみながら、対象者にお手紙を書くような感じでフィードバックすると良い」と、メンタルコーチに教わった。

例えば、

あの時「嬉しかった!」、というポジティブ・エピソードがあるとする。

それを逆算で解像していく感じで、

(エピソード)
→ 上司に質問され、答えに窮し微妙な沈黙が続いていたところ、ミュート解除して助け舟を出してくれた。

(考え・思い)
→ 見守られているんだな、と思った。

(沸いた感情)
→ 嬉しかったし、心強かったし、そしてありがたかった!

(FB対象者による解釈・気付き・改善点の自覚)
→ 頼りにしてくれている、チームを大事にしていることを分かってくれた、仲間を見捨てない自分を信じてくれた、他部署の案件を把握していることを分かってくれた・・。

 

といった具合だ。

逆にネガティブフィードバックの例だと、

あの日「屈辱感で眠れなかった・・」という、その人とのエピソードを思い返してみる。

(エピソード)
→ 他のみんながいる会議の場で「議論のロジックが甘い」と言われた。

(考え・思い)
→ それ、いまここで言う?さっきの打ち合わせで何で言ってくれなかったの?

(沸いた感情)
→ みんなの前で言われて恥ずかしかった、悔しかった、そんな人だとは思っていなかったのでちょっとがっかりした・・。

 

といった、その時に抱いた「感情(気持ち)」を伝えるのか。

それとも、
「あなたのあの時の態度は上司として酷いと思います」
「もう少し部下を大事にしてください」
と指摘し、訴えるのか。

感度の高い人ならば、
「イライラすると、時と場所を選ばずデリカシーに欠けたことを、ついしてしまうな」
「部下のプライドを傷つけるようなことを平気で言ってしまって恥ずかしいな」
「事前MTGがあるのだから、それぞれのMTGの意味を改めて考えなければいけないな」
といった気付きが、きっと生まれるはず。

 

「改善点を明確に指摘してあげること」が、まるで正義のように言われる傾向が強いが、正直私はまだそこにも迷いがある。

 

「気付きを促すなんて甘いこと言ってるな」とお叱りを受けるかもしれないし、正解は無いのだろうけれど、私は人の内省力に賭けたい。

明日、2021年度役員360度評価として、部長・本部長・他役員からのフィードバックが書面で返ってくる。

楽しみで仕方ない!