「欧州リーグと比べて、Jリーグの良いところは何ですか?」と取材などで聞かれることがあるのですが、私は「サッカー界に過激派イデオロギーが入り込んでいないこと」だと思っています。

 

「良いところ」ではなく、「誇りに感じること」といった方が、正確かもしれません。

逆に言うと、30年もヨーロッパサッカー界でお世話になっていながら、どうしても私が欧州サッカーを骨まで愛せない理由が、まさにここにあるのかも、と感じます。

最近むさぼるようにインタビューを聞いたり、見たり、読んだりしている方で、ダビド・サアベドラという元過激派グループに所属していた人がいます。

『元スキンヘッド(ネオナチ)の回想録』という書籍を出版し、YouTubeチャンネルで啓発をしている方です。

実際に、スペイン国内の中学・高校に講演会に行くなど地道な啓発活動を展開している方でもあります。

・15歳だった彼が、どのようにしてネオナチ信奉に溺れていったのか

・ネオナチも、ファシズムも、独立運動を謳うテログループも、イスラム過激派も、リクルーティング手法は新興宗教的メカニズムのそれ

・知識も判断力もない思春期の若者に上手にアプローチをして予備軍を形成していくその恐ろしい舞台裏

・フットボールの過激グループはフットボールが目的ではない(インパクト露出効果を利用しているだけ)

・こうした洗脳からどのように抜け出したのか

・今もなお、心理学の専門セラピストにお世話になりながら洗脳を解く作業を続けている

など、衝撃の証言、そして価値あるメッセージで溢れています。

こうした過激派集団は、若年層の「孤独」につけ込み勧誘。組織に加わることで、彼らに大きく欠ける「帰属意識」を充足。更に「薬物」を提供することで依存関係(脱退阻止)を強固にする手口もある、と聞いたことがあります。

スペインのクラブには、セキュリティ・ダイレクター(オフィサー)という役職があり、チームの遠征などには必ず帯同していますが、彼らは当然、テロや襲撃、そしてイデオロギーについての知識も相当な勉強をされています。

またリーグ運営においてスペインでは、UCOという国家警察を中心としたの特別部隊がスタジアムで何十ものカメラで監視の目を光らせています。

私は、Jリーグクラブのスタジアム周りのあの雰囲気が大好きです。優しくて、温かくて、穏やかで、幸せな気持ちになる、あの空気が大好きなんです。


百年構想からも分かるように、Jリーグは地元地域において永続的な存在でいたい。だからこそ、Jリーグを愛する全ての方々に「いまあるこのJリーグの姿を、これからも守り抜いて欲しい」と、切に願わずにいられません。