久保建英選手のスペイン移籍。嬉しいニュースですね。本当にワクワクします。
さて、その移籍先について、いくつかご質問を頂きましたので、今日は私の分かる範囲でお話ししてみようと思います。
【スペインのリーグ構成】
スペインのリーグ構成は、このようになっています。
o 1部(プロリーグ)
o 2部(プロリーグ)
o 2部B
o 3部
o 地域リーグ(各自治州・県協会によって何部かに分かれる)
今回、久保建英選手が移籍する「レアル・マドリード」は、この「2部B」というカテゴリーに属します。
【2部Bってなに?】
2部Bは、プロリーグ(ラ・リーガ)には属しておらず、あくまでリーグ自体はアマチュアリーグ。主催・運営はスペインサッカー協会の管轄。日本の方によく「JFLみたいな感じですか?」と聞かれますが、まぁ、ムリヤリあてはめようとすれば、そんな立ち位置でしょうか。
この2部Bですが、スペイン国内を4グループに分け、各20チームでリーグ戦を行います。リーグ終了後は、成績によってプロ2部昇格プレイオフなどもあります。
選手登録マックスは22名。そのうち6名はU23でなければならないという規定があります。
2部Bに参戦しているクラブの多くは、古豪クラブが多く、選手構成も元プロ選手などを含めたベテランが多くいるのが特徴です。
そんな中、トップチームをプロリーグに持つ大きなクラブでは、サテライトにあたるU23チームをこの2部Bに参戦させながら、トップリーグに即戦力で起用できるような選手育成を目的としチーム編成をしています。
スペインには、U21-U23エリートリーグがないためです。厳密にはむかし、U21エリートリーグを発足したのですが、1~2年で消滅してしまいました。やはりU21-23は、なかなか課題が多い年代です。
「U23を制したものが世界を制す!」といっても過言でないくらい(いま私が勝手につくりました)、トップリーグに選手を輩出するには、大事な年代ですね。
【ビッグクラブのピラミッド構成】
スペインでは、久保建英選手のチームのことを「カスティージャ」と呼びますが、「レアル・マドリードB」チームであり、またカテゴリーで言えば「U23」、トップチーム直下の「サテライトチーム」ということになります。呼び方が色々あって少しややこしいですが、そういうことだとご理解ください。
例えば弊クラブ、ビジャレアルでは、ユース年代(U19)を終えたら、次の段階に、ビジャレアルC(U21)そしてビジャレアルB(U23)があります。ユースからトップチームまでの間にもう2段階あることになります。
ただ近年、ビッグクラブではU21の排除が進められ、例えばレアル・マドリードやアトレティコ・マドリード、バレンシアなどは、数年前にこうした措置をとったため、実質「B」チームは選手構成が更に若干若めでU21-22のことが多いです。こうした大きなクラブからしたら、23にもなってトップレベルでプレーしていない選手には将来性が見込めない、という判断なのでしょう。
ただ能力は高くても、ベテラン選手相手にこのリーグを乗り切るのは容易ではなく、若さゆえに「経験値」に負け、闘いきれず、苦戦することもあります。
尋常じゃないクオリティーを持ったサテライトチームは、時に2部プロ昇格プレイオフ入りをするほどの活躍を見せたり、また逆に、3部降格圏内をうろついたり・・・。なかなか読めないところも、このリーグの楽しい点かもしれません。
ベテラン古豪クラブと、ビッグクラブの金の卵たちという対照的なチーム同士が、同じリーグ戦で約10か月リーグ戦を繰り広げるので、フットボールのスタイルや、解釈の違いと豊かさが見えて、大変興味深いものです。
ま、いずれにしても、ビジャレアルでは、いまもなおU21、U23というプロセスの重要性を信じ、Cチーム(U21)を継続して持っています。
サテライトの意義は「トップチームへの選手輩出にある」と言えるでしょう。必要となったときに、即戦力として起用できるだけの十分な良い準備をしておくこと。サテライトの選手としては大事な点ですね。
「えっ?じゃあ、久保建英選手も、今年、レアル・マドリードでトップ起用があるってこと?」と思われた、あなた(笑)。
こればかりは、外国人枠問題があるので、何とも言えません。トップチームの外国人枠に空きがあれば、久保建英選手のトップでの出場機会はあると言えます。他クラブの事情なので私もよく存じ上げませんが(笑)、ファンにとっては夢のある話しですね。ワクワクします。
【久保建英選手の監督になる方は、いったい、なに者?】
ラウル・ゴンサレス氏のカスティージャ監督就任が、昨日発表されました。ラウル氏は、レアル・マドリードの歴代最多出場記録保持者であり、レアル・マドリードの象徴的存在の選手。またスペイン代表でもキャプテンを務めるなど、スペインサッカー界における偉大な貢献者のひとりです。スペインで彼を知らない人はいないでしょう。
選手を引退後は、指導者の道を選び、昨シーズン2018/2019は、レアル・マドリードU15(2004年生まれ)の監督を。クラブ事情で、シーズン途中にU18(2001年生まれ)に昇格。そして、今回こうして新シーズン2019/2020は、育成部としては最高峰にあたる「カスティージャ」、レアル・マドリードU23監督に就任。
ま、クラブ的には、近い将来のトップチーム監督になってもらうための策なのでしょう。
【指導者ライセンス事情】
スペインでは、指導者ライセンスのレベルによって、監督就任できるカテゴリーに制限があるため、これまで最高レベルの指導者ライセンスを持たなかったラウル氏は、限られたカテゴリーでしか監督ができませんでした。
例えば、プロ1部、プロ2部、2部B、3部、ユース・トップリーグ、女子1部などは最高レベルのライセンスが必要となります。
ここ数か月、ラウル氏はUEFA Proライセンスを受講していましたが、先日ライセンスを無事取得したようなので、今回こうしてカスティージャ監督就任が実現したというわけです。逆にいうと、ラウル氏のカスティージャ監督そしてその先のトップチーム監督を視野に入れているクラブとしては、UEFA Proの取得を心待ちにしていたとも取れますね。
来季の2部Bが面白くなりそうです。グループ1だけでなく、是非、皆さん、ビジャレアルBがいるグループ3も応援よろしくお願いします!
乱文ですが、ご参考頂ければ幸いです。