24日(金)に行われるU-20女子ワールドカップ決勝戦、スペインはサスペンションのため出場できないアイタナ・ボンマティ選手以外は、おそらくグループステージ第2戦で日本と対戦した陣営とほぼ同じメンバーで試合に臨むと思われる。


 システムも攻撃時に4-3-3、ボールを持てない時間帯は4-1-4-1に変化させながら対応すると予測できる。


 日本はグループステージでスペイン相手に敗戦を喫したものの、内容的には完成度の高い戦い方をしていたし、特に試合プランを大きく変える必要はないだろう。


 あの試合では多少スペインにボールを持たれる時間が長かった印象はあったが、まったく焦る様子もイライラすることもなく、程よくライン間を調整しながら、スピードやパワーもしくはロングボールでサプライズをくらうようなこともなかった。


 スペインにディフェンディングサードでボールを回されている分にはちっとも怖くなかったし、ミドルサードに侵攻されたときにチェックを厳しく簡単にボールを受けさせない工夫や、局面でしっかり対応することでスペインのボールロスを誘発するような地味な作業が光っていた。


 特にスペインが一番やり難かったのは、まさにその日本の「突っ込んでいかないディフェンス」だったのではないかと、私は思っている。


 選手間、ライン間でバランスを取りながら「人」にくっつき過ぎず、辛抱強く、前方・前向きにディフェンスすることに徹底していた日本は、スペインにとって本当にやり難くかったと思う。常に前を向いている状態を作ることで選手は状況がよく見え、より良い対応ができるためか、インターセプトの数が21とスペインの11を大きく上回ってもいた。


 相手のミスを誘いボールロストさせ、ボール奪取。そこからの切り替えも早く、もともとそこに居た選手(stay)と絡むのではなく、相手選手の視界外から出現する選手(appear)がスペースを埋めながら攻撃に参加してくる。さらに日本の選手は「運べる」「つなげる」「持ち込める」「打てる」など様々な手を持ち、スペインからしたら本当に脅威だったことだろう。


 しかし、いま勢いづいてノリノリに「のっている」スペイン。彼女たちは、決勝戦立ち上がりから果敢に勝ちにくるに違いない。恵まれない環境で華やかな男子リーグの陰で日の目を浴びることのないこの子たちは、その男性社会であるスペインサッカー界に向け挑戦状を叩きつけている。世界一になってそんな社会をギャフンと言わせたい。女子サッカーを認めさせたい。男子と同じような恩恵を受けたい。そんな気迫と匂いがプンプンする。


 スペイン人選手の気質は平均して気が強い…というか、気が荒い。喜怒哀楽が鮮明で調子に乗せると怖いけれど、気持ちの波がイレギュラーであることは、ときに彼女たちの弱点にもなる。苦しい状況や厳しい時間帯、イヤな位置からのフリーキックや、納得のいかない判定に対するアピールなど、ちょっとしたことで感情が乱れ、心がぶれる。


 だから日本は、どんな時も最後まで、ただただ辛抱強く冷静に「いま」「ここ」で起こっている現象にだけ気持ちを向け戦い切ると良い。


 グループステージの対戦で少しだけ気になったのは、空中戦のドュエルでスペインが70%、日本が30%で分が悪かった点。空中戦で勝てなくてもセカンドボールを上手に拾っていければそれでいいのかもしれないが、ただでさえサッカーにおいてハイボールへの対応というものはとても難しい点なので、コーナーキックやフリーキックそしてクロスボールなどへの対処法はしっかりと試合前に確認しておきたい。


 スペインで気を付けたい選手はやはり、中盤の選手でありながら現在6得点を挙げているパトリシア・ギハーロ選手。彼女は14歳まで男子チームでプレーをしていたが、その後は協会レギュレーションの関係で男子リーグではプレーし続けることが許されず、その後女子チームへ移籍。17歳でバルサからオファーを受け、地元マジョルカ島から本島へ転居。シュートレンジが広く、遠目からでも容赦なく打ち込んでくるので注意が必要。


 また、状況しだいでは後半20-30分あたりに途中投入されるであろうエバ・ナバーロ選手への対応も準備しておきたい。彼女の縦へのスピードと、ゴールを目掛けて内へカットインしてくると見せかけた後に、前を向いたまま足首を上手に使ってペナルティーマークを目印に落とし込む彼女のパスを待ち受けるシューターを、きちんとマーキングできるかどうか。


 チーム力が互角のこの決勝においては、こうした細かい部分をどこまで徹底できるかが、勝敗を分けるカギになるだろう。
 

 ヤングなでしこの優勝に是非期待したい。