欧州の一流プロサッカー選手が引退から5年後に経済的破綻に陥るケースは実に60%と言われる。

私も周囲に何人かそうした友人・知人を見てきた。

引退と同時に突然「ただの人になる」ことがどんな意味を持つのか。有名でも高給取りでもない私達には想像もつかない。

幣クラブには全国からスカウトしてきたフットボールの精鋭達が、小学6年生から高校生まで120名ほど寮生活を送っている。

彼らはお金を「もらって」フットボールに専念するエリートである。

ブランド品を身に付け、18歳になると免許を取り、新車を乗り回す。

お金の使い方や、社会の仕組みなんて覚える術もなく、それが当たり前のようにそのまま大人になっていく。

数年後プロ契約を結べる選手が果たしてどれだけいるというのだろう。

給与明細は自ら取りにくりものだということ。確定申告というものが存在すること。パスポートは有効期間があって自分で更新しなければならないこと。給料をまるまる車のローンに当てたら寮を出てから生活してはいけないこと。

当たり前が当たり前ではない彼らの非現実的な生活を見ながら、周囲の大人達は何か言ってあげただろうか?

社会をそして現実を彼らに知って欲しくて、弱者を思いやり、手を差し伸べ、互いに助け合うことこそが共生の基盤になっていることを分かって欲しい。

サッカーが上手で、学費、寮費、お小遣いまでもらって、学校でも人気者の彼らがプロになれなかった時、プロを引退したとき、「ふつうのひと」になった瞬間に「ひと」であって欲しいから、クラブ総力挙げて昨年この人格形成プロジェクトを立ち上げた。

今季で2シーズン目の試み。

フットボーラーさえ育ってくれれば良いのか。それとも人を育てるのか。

私達は、お預かりした選手たちを最後まで責任を持って「ひと」として育てていきたい。プロジェクト公式記者会見
レディースは聾唖者協会と提携