7月8日(木)
朝4時過ぎに目が覚めて、
もう起きてもいいなあと思ったけれど
スマホを見ていたら娘が起きてしまった。
「ママ、もうあっち行っちゃうの?」
という顔が可愛らしくて
「もうちょっとここにいようかな」と言ったら
「やったー」と呟いて私の手を握って眠った。
本当に、
こんなにこんなにこんなにこんなに
愛おしい生き物が私の横にいるなんて。
とはいえ自分の時間も愛おしいので
5時ごろ起きて1日を始める。
朝のピラストレッチの間
ジュレのシートマスクをつけていたら
内から外からプルプルになった気分。
今日1日のスケジュールを組む。
今日もまた、午後の予定が急遽流れたので、
かなり余裕ができた。
私にはスケジュール管理が3つあって、
一つはタスク別に
EMERGENCY/TODO/WAIT
の3つの項目に分かれているエクセルシート。
どこかで進め忘れているコマがないかを
ここで管理している。
もうひとつは30分単位で予定を書き込む
アクションプランナーという紙の手帳。
アクションプランナーさん的には
これ1冊で完結することが
やりたいことを確実に叶える道だ、と
提案されているのだが、
なかなかそうも行かない。
もう一つは付箋タイプのTODOリストで
アクションプランナーに貼っている。
誰々に電話とか生協予約とか
数分で終わるようなこともあれば、
数時間かかる原稿もある。
時間の定まっているミーティング類は
ここには書かない。
夜か朝、最初のエクセルシートから
この付箋に明日(または今日)
すべきことを書き出し、
dateの欄に優先番号を振っていく。
で、それぞれの所要時間を想像しながら
アクションプランナーの
アポイント以外の隙間に落とし込んでいき、
溢れたものは溢れていいのかどうかを検討する。
でも日中、例えば電話がかかってきたり
原稿に予想以上に時間がかかったり、
朝、予定していなかった
緊急要件が発生したりして
スケジュールは狂い始めるのだが、
1日に何度かTODOリストをチェックして、
翌日に回していいもののを見極めたり
なんだかんだ調整する。
というわけで今のところ、
私にはこの3つのスケジュール管理の
組み合わせが快適だ。
大体、日中にタスクは増えていくので、
例えばアポイントが2、3時間入っている日なら
朝の時点でこの紙の半分くらいまでに
TODOが収まっていないと危険信号なのだが、
今週前半は1日の最初から
1枚に書ききれないくらい溜まっていて、
ちょっと笑えた。
無理だなあと思っていたが、
それもちゃんと雪解けのように
過ぎ去っていって、不思議。
時間って偉大だ。
無理っぽいなあと思う時はいつも
アイアンマンレースを思い出す。
3.8キロ泳いで、180キロ自転車をこいで、
42.195キロ走る、なんて
ちょっと聞くだけで無理っぽいのに、
ただ手足を前に出し続けるだけで、
十数時間後に私はそれを叶えてきたのだ、何度も。
それを思うと、原稿も絶対終わる、と思える。
例えば1日でポルシェを100台売ってくること、
みたいなタスクなら、
相手のあることだから全然自信はないが、
私の原稿は、自分さえ頑張ればいいのだ。
しかも私の書いているのは、
オリジナルの小説でもなく、
すでに取材をした内容ばかりなのだから、
書けないはずはない。
いつもそう思ってパソコンを開く。
アイアンマンの成功体験は、
毎日私を支えてくれる。
朝はオンラインミーティング。
そしてYeLLの1オン1を終えると、
もう昼近くになってしまう。
時間の経つのは早い。
ランチは近所のメキシカンで
時間もないのでテイクアウト。
午後、今週最後の原稿を納品し、
次の企画の仕事に取り掛かろうと
駅前の本屋さんに調査に行ったところ
ついた途端、保育園から電話が。
娘がトイレでお尻をちゃんと拭けていなくて
うんちがついてしまい、
しかも予備のパンツが切れていて、
コロナ禍で下着の貸し出しをしていないので
おむつを履かせたのだが、
恥ずかしがってトイレにこもっているという。
最近お着替えセットを自分でするように
任せていたので、在庫管理まで
目が行き届いていなかったのだ。
保育園にパンツを持ってきて欲しいと言われ
家に帰る時間も惜しくて同じビル内の無印良品へ。
この春で子供の下着の取り扱いをやめたそうだが
かろうじてあった売れ残りを買って
ダッシュで保育園に行き、汗だくで戻る。
ほらね。アクションプランナーだけで
管理していたら、こんなとき、
えらいことになってしまうのだ。
そんな行ったり来たりで
ようやく企画の提案をしたらもう夕方。
そうこうするうちにゲラが出て校正を回したり
昨日回した校正が戻ってきて赤字をつけ込んだり。
まあ、とにかく。最低限乗り越えた。
そんな間も、朝のミーティングのことが
ずっと頭の中を巡っていた。
娘に「ママ今日お仕事でもやもやしててさあ」
と話すと、「何があったの?」と聞く。
でも説明するのが難しいっていうか
人が聞くと絶対どうでもいいことだと
思うと思うから大丈夫、と言ったのだけど、
「いいから言ってみて」と娘。
「例えていうと、ママがさ、お仕事の人に
イチゴのケーキ作ってって頼まれたのよ。
とちおとめかべにほっぺのやつ、って。
それで果物屋さん何軒も回って、
とちおとめとべにほっぺ両方買ってきて
ママなりに頑張って作って届けたら
“いちごだけ?”って言われたのよ。
えーってなるじゃん?わかる?わかんないよね」
と話したら「わかるよ。」と娘。やさしいなあ。
話しているうちになんだか心が緩んだ。
というわけで、明日は改めて
メロンケーキの原稿を書くのだ。
こんな時にはいつも、
坂本龍一の「スイートリベンジ」
という曲の誕生秘話を思い出す。
このアルバムタイトルのコンサートに
大学の先輩に誘われて行ったのだ。
ラストエンペラーの曲を頼まれた時
最初に作った素晴らしい曲に、監督が
「悲しさが足りない」と言ったそう。
それでその曲はボツにして、もう一度、
ものすごく悲しい曲をどうだと作ったら
「悲しすぎる。一筋の光が欲しい」
と言われて、またその曲をボツにして
新しい曲を作り直したそう。
だけどボツにした曲が素晴らしい曲だったから
世に出して監督に復讐するんだ、と
そうして発表したのが
「甘い復讐=スイートリベンジ」だというのだ。
ステージの真ん中で、
グランドピアノに向かって
この話を呟いていたサカモト教授が
悔しそうで可愛くて、印象的だった。
教授でさえそんなダメ出しを喰らうのだ。
言わんや私をや。明日も頑張ろう。
メロンケーキ頑張ろう。
先に言わなくてごめんなさい、
イチゴケーキはお願いした通りだし完璧だと
クライアントは途中で言い直してくれた。
なのに、その後でさえもやもやしてしまうのは、
ただ単に私の弱さだ。と100%わかっていても
もやもやを消すのが難しいのって
本当に馬鹿馬鹿しくって人間て面白い。
とにかくとっととメロンケーキを作るのだ!
そして次からはイチゴケーキを頼まれたら
ついでにメロンケーキも作ってみましたと
言える大人になるのだ!
要するに、
ドタバタすると狭量になるのだ、人間は。
アクションプランナーに
堂々と白紙の枠を作る暮らしを目指そう。



