手伝ってください。
某テレビ番組で、俳優のきたろうさんがお話しされていたこと。
彼は仕事で地方に行くと、
必ず地元の名もない居酒屋にひとりで入ります。
そこに、ひとりカウンターで飲んでいた初老の男性。
店の方にグラスを渡し、ビール瓶を傾けてこう言ったそう。
普通なら「まあどうぞ一杯」などというところを、
「手伝ってください」と言った、
その言葉に、きたろうさんは打ちのめされたのです。
また別の場面で、同様の思いをしたそうです。
ある焼き物のコレクターの方に見せていただいた器を
いたく気に入り、じっと見ていたところ、
「預かっていてください」
とその器を差し出されたそう。
「よかったら差し上げますよ」では
遠慮してしまうと思ったのでしょう。
私も先日似たような経験をしました。
仕事で夕方、ビルの高層階にある某社に訪れたときのこと。
窓いっぱいに夕焼けが広がり、それは美しい景色でした。
そのとき、受付から案内してくださった女性の言葉。
「ここにいても、なかなかこんな景色は見られないんです。
今ご案内させていただけたおかげで私が得をしました。
ありがとうございます!」
相手に「何かをしてあげた」とき、多くの場合、きっとこんなふうに
反対に「何かをしてもらった」と
捕らえ直すこともできるのでしょう。
そしてそう考えられたら、
出会う人みんなへの、感謝の気持ちでいっぱいになるでしょう。
それは自分自身へのプレゼントにもなります。
「私は彼にこんなに尽くしているのに、
彼は自分のことばっかり」とか
「私ひとり必死で働いていて、みんな私に押しつけて」なんて
愚痴って心を淀ませるのはもったいない。
例えば彼に料理を作ってあげたのなら、
「料理の練習をさせてもらった」と捕らえ直す。
たくさんの仕事を頼まれたのなら
「スキルアップのチャンスをもらった」と捕らえ直す。
思考の矢印の向きを変えたら、
いただきものばかりの人生になるのです。
きたろうさんはこのテレビで、「日本語の国に生まれてよかった」と
おっしゃっていましたが、
私には大好きな英語があります。
日本語の「どういたしまして」のように使われる、
けれどずっと素敵な言葉。
It's my pleasure.
最近だれかに「何かをしてあげた」ことはありますか?
そのことを、感謝の矢印で捕らえ直してみませんか?